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学生の講義ノートから学ぶ


教授 小泉祐一郎(法学、公共政策学、人文地理学、地域学)

 筆者が担当する憲法、民法、行政法、地方自治論など全ての講義で、学生に講義ノート用紙を配布し、毎回、回収して4段階で評価し、次回の講義で返却している。講義ノートには、「たいへんよくできました」「よくできました」「がんばりました」「もう少しがんばりましょう」の4種類のいずれかが押される。シラバスには、期末テストと講義の受講態度の2つで評価をすることにしており、講義ノートの評価は、受講態度の評価として点数化している。
 学生の講義ノートを見ていると、様々な発見がある。ノートの内容は、黒板に書いた内容を書き写しているのであるが、筆者の黒板の記述よりも学生のノートの方が、カラフルで、きれいで、しかも、ポイントをわかりやすく書いているものがある。デザインのセンスでは、学生にかなわないことを思い知らされるのである。デザインの優れたものを研究室のホワイトボードに並べて眺めていると、レントゲンの写真を見ている医師のような気分になってくる。また、筆者がかつての役人時代に、国や県の行政の職場で書類を作成すると、見た目がきれいなものは、上司のOKがとりやすかったことを思い出す。
 もちろん、講義ノートの評価は、見た目のデザインではなく、講義のポイントをどの程度理解しているかで行っている。黒板に書いた内容を全て書く必要はなく、重要な内容をポイントをはずさずに記述しているかどうかが重要である。この観点で学生たちの講義ノートを見ていくと、筆者の講義がどの程度ポイントを正しく学生に伝えているかを写す鏡でもあることがわかる。
 先日の行政法の講義では、昔の伝統的な考え方として一般的に承認されていた「特別権力関係論」の説明で、現在はこの考え方は否定されているということを口頭で簡単に述べたが、学生のノートには「現在は否定」の記述がないものがあり、中には「昔?」と書いたものもあった。早速、次回の講義で、講義ノートを返却したところで筆者の説明不足を学生に謝罪することになった。
 講義ノートを見ていて驚くのは、運動部の学生や留学生の中に、「たいへんよくできました」又は「よくできました」の常連さんが少なからずいることである。この調子で勉強をしていたら、彼らに筆者など簡単に追いつかれてしまうかもしれないと少し不安に思ってしまう。講義終了後に来る学生の質問がポイントを鋭く突いているので驚くこともある。
 学生と接していると学ぶことがいろいろあるが、学生の講義ノートが筆者への通信簿のような不思議な存在として、筆者に様々な学びの機会を提供してくれるものになっている。