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経済学の新たな分野 『スポーツ経済学』


私の専門は経済学です。
 経済学はこの10年くらいで他分野との連携を強化し、心理学との連携から行動経済学などの新たな分野を開拓し、国際政治学などの他分野においてもひとつの分析手法として採用されています。世界的に見ても、経済学の他分野への応用が進んでいます。しかしながら、日本ではなかなか進んでいない分野もあります。スポーツ経済学がその例です。
 欧米におけるスポーツ経済学は、スポーツマネジメントの分野から独立してスポーツ経済学の学会(International Association of Sports Economists)を1999年に立ち上げました。専門誌であるJournal of Sports Economicsは2000年に第1号が発行され、さらに2006 年になってInternational Journal of Sport Finance が刊行されています。その後、2008年には北米でNorth American Association of Sports Economists が、2010 年には欧州でEuropean Sport Economic Association がそれぞれ立ち上げられました。ただし、日本では残念ながらいまだにスポーツ経済学の学会は存在していません。
 経済学からのスポーツへのアプローチは1956年にRottenberg(1956)によって書かれたメジャーリーグ選手の労働市場の分析が最初です。スポーツに関する経済学研究は労働経済学分野での一つの事例として扱われることが多く、経済学の研究がスポーツそのものを研究対象とするのはここ最近のことです。最近のトピックスを例にあげるとリーグ運営の最適な規模を考察する研究やスポーツファンの消費行動からの満足度=幸福度を考察する研究などがあります。このほかにも、世界で見ればスポーツを取り上げる研究は確実に増加しています。
 スポーツ経済学の教育に関しては、学部レベルの良質な教科書が発行されています。主な教科書は、Leeds,M.A.,von Allmen,P.(2001),The Economics of Sports ,Pearson、 Sandy,R.,Sloane,P.J., Rosentraub,M.S.(2004), The Economics of Sport an international perspective,Palgrave、Downward,P.,Dawson,A.,Dejonghe,T.(2009),Sports Economics theory, evidence and policy,Routledgeなどがあげられます。どれも2000年代に入って発行された教科書です。ただし、欧米でもスポーツ経済学の授業提供は大きく広がっているわけではなく、大学院レベルに至っては教科書すら存在していません。
 ただ、スポーツ経済学の研究は確実に成長していますから、教育の方も授業内容が整理され、大学院レベルの授業提供もそう遠くないと思われます。
 日本ではスポーツ経済学という書物は散見されますが、内容は経済学の考え方を紹介しているのみで、スポーツを経済学で分析するまでには至っていません。研究論文では労働経済学分野での事例としてスポーツを取り上げることが多く、スポーツそのものを取り上げているのはほとんどありません。
 また、教育に関してもスポーツ経済学の必要性に気付いているスポーツビジネス研究者は多いのですが、授業提供にはまだ至っていません。これは、スポーツ系学部には経済学者がいないため、なかなかコミュニケーションをとって共同研究を行うことは難しいためでしょう。世界のスポーツ経済学の潮流を考えると日本にも研究や教育の流れが来るのは間違いありません。
 そこで、スポーツ経済学の研究を推し進めて新たな分野の開拓を行うのが今の目標です。
日本には欧州起源のリーグ運営(Jリーグ)と米国起源のリーグ運営(プロ野球)が共存していますので、経済学の応用を行うには適した状況なのです。
 ちなみに、本学ではスポーツビジネス研究者と経済学者が共存していますので、日本最初のスポーツ経済学を扱う大学になりうる存在だと思っています。

参考文献
Rottenberg,S.(1956), “The Baseball Players’ Labor Market,” Journal of Political Economy 64 (3), pp.242‒258.