グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  リレーエッセイ >  スポーツ活動のケガに対するリスクマネジメント

 

スポーツ活動のケガに対するリスクマネジメント


講師 中井 真吾(体力科学、スポーツ医学、理学療法学)

 リスクマネジメントという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。リスクマネジメントとは、『事前策と事後策を整備し、リスクの低減を図ること』とされ、スポーツ活動時の外傷・障害(ケガ)については、すべてのケガが防げるわけではないものの、指導者や保護者、選手が共通認識を持って、重大事故やケガを減らす活動することが重要とされています。
 スポーツ現場において、最も注意すべきことは、生命の損失です。生命危機である突然死は、心疾患が原因であることが多く、事前策として、事前のチェックが有効な手段になります。具体的予防策は、学校の健康診断を受け、運動をして良い身体状況かどうかをスクリーニングし、さらに日々の練習前などの日常的なチェックで体調を聞いておくことが求められます。学校等の教育機関では、既存の情報リソースを上手に活用するシステムを構築していくことが突然死の予防策と考えられます。
 また、緊急事態が起こってしまった場合には、事前に、心肺蘇生法、AEDなどの使用方法や救急搬送、緊急連絡網など一連の対応をまとめたエマージェンシーアクションプラン(Emergency Action Plan:EAP)と呼ばれる対応計画を作成し、それに基づいて、行動を起こします。米国のスポーツ現場では、EAPの作成は義務化がされています。日本での普及率は低く、多くのスポーツ関係者に知っていただきたいと思っています。
 予防や対応をするために緊急性や重症度の高い心疾患、熱中症、頭部外傷(脳震盪)について、ある程度の知識を事前に知っておく必要性があります。今年の夏は、長期にわたった暑い期間となりましたが、熱中症予防策として、暑熱順応期間の設定、WBGTガイドラインの運用、水分補給の3つを守ること、もし、熱中症になってしまった場合には、30分以内のアイスタオルなどを用いた適切な処置を行うことが重要であるという内容は必須の知識だと思います。
 上記の重症なケガ、病気も重要ですが、楽しく活動をするために、頻発するケガを予防することも大切になってくると思います。学校では運動器検診が始まっていますが、プラスして筋の柔軟性や関節の不安定性、X脚やO脚などの骨のアライメントのチェック、バランス測定や基本的な動作測定をすることで、ケガをしやすい身体かどうかを評価することができます。その評価を基に、レジスタンストレーニングを含んだコンディショニングを行うことで、トップアスリートのパフォーマンス向上だけでなく、ケガの発生率を抑制することができることを示唆している研究もあります。
 スポーツ活動時におけるケガや病気は、幅広く軽症なものから重症なものまで含まれます。楽しく真剣にスポーツ活動に取り組むためには、軽症だから大丈夫ということではなく、すべてのケガに関して様々な関係者が協力し合ったリスクマネジメントをすることが重要だと思います。