グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  リレーエッセイ >  「スポーツ科学におけるテクノロジーの発展の是非」

「スポーツ科学におけるテクノロジーの発展の是非」


「スポーツ科学におけるテクノロジーの発展の是非」

 スポーツバイオメカニクスとは、力学や解剖学を応用して、スポーツにおける運動を解析する学問領域です。例えば、100mを9秒台で走るためのフォームや時速150kmのボールを投げる時の筋肉の活動などを分析して、競技者のパフォーマンス高めることや、ランニングの時にケガをしにくいフォームの分析など、スポーツの傷害予防などにもスポーツバイオメカニクスの知見が使われています。その中で、動作を測定する方法として「モーションキャプチャー」が一般的に用いられています。モーションキャプチャーには、光学式や機械式や慣性センサー式など様々な方式のテクノロジーが用いられています。これによりスポーツ科学における、スポーツの動作分析に大きな変化をもたらしただけでなく、ゲームや映画などにも活用されて、エンターテイメント業界にも大きな変化をもたらしています。
 このように、近年のテクノロジーの発展はめざましく、スポーツ科学においても一昔前には莫大な時間や労力をかけないとできなかったことが、わずかな時間でできるようになっています。研究者としては、実験や測定が楽にできて、分析が短時間でできるという点は非常にありがたいことです。しかしながら、テクノロジーは人が作り出したものなので、それを使いこなすのもまた人です。簡単に言ってしまえば、悪い人が使えばテクノロジーを簡単に悪用できてしまいます。いくら優れたテクノロジーが世の中に出てきても、そのポテンシャルをどのように引き出すかも、それを使う人たち次第ということです。優れたテクノロジーを正しく使うことが、研究者としても大切なことだと強く感じます。
さらに、近年ではAI(人工知能)分野の進歩も著しく、様々な分野で応用されつつあります。このままだと今まで人が分析してきたことも、いつかはAIが人に代わってできるようになってしまうのではないか(研究者の職がAIに奪われてしまう!?)と不安がよぎります。もちろん、人の方が優れている点とAIの方が優れている点は異なり、それらが共存することが望ましい姿であると思っています。
 さらなるテクノロジーの発展は私も望むことですが、そのテクノロジーを使いこなせる能力や倫理観を持つことが必要だと思います。想像もできない未来のテクノロジーの出現に期待することもさることながら、それを使って今まで分からなかったことを解明できることにワクワクしています。