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日本近代小説の読解


准教授 後藤隆浩 (イギリス文学)

 前回のリレーエッセイにおきましては、私が現在担当しております「文学」の授業に関して考えていることを、いくつか述べさせていただきました。今回は、文学研究者の立場から、日本の近代小説に関して、日頃考えていることを述べてみたいと思います。

 私はイギリス文学を専攻し、特にイギリスの近代小説を中心に勉強を続けてきました。それと同時に日本の近代小説にも強い関心を持ち続けてきました。文学作品における表象を土台として、精神史の観点から近代とはどのような時代であったのかということについて考え続けてきたわけです。

 文学作品に対してどのような角度からアプローチするにせよ、基本となる作品のテキストをきちんと精読することが、最も重要な基礎作業であります。母国語で書かれている日本近代小説のテキストの読解作業におきましても、外国文学のテキストの読解作業と同様に、国語辞典を徹底的に活用する必要があるでしょう。一語一語、一行一行テキストの細部に密着しながら言語の機能、言語表現のメカニズムを確認していくことが大切であると考えております。

 さらに事典類を活用してテキストに書き込まれている物や事に関しても確認していく必要があるでしょう。このような作業をまず自力で進めたうえでテキストに付けられている注釈を参照してみるならば、かなり効果的にテキストを解析する力が得られるものと思われます。

 このような分析的読解作業は、かなりの時間と労力そして根気を必要とするものでありますが、日本の近代社会における様式や制度といったものを具体的に認識し、把握することが可能となるでしょう。現代日本社会の土台としての近代日本社会の構造が、近代日本精神史の文脈から見えてくるはずです。

 私も批評的読者の一人として、テキスト内の〈言語〉〈文化〉〈歴史〉といった要素に関する理解と認識を深めて、総合的視野から日本の近代小説を読解していきたいと考えております。日本語の構造と変化、生活や文化の歴史など様々なレベルにおいて、多くの新鮮な発見があることと思います。