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「カイジ」から経済を学べ


学部長 教授 丹羽由一 (企業経営、財務管理、国際金融、アジア経済、地域経済、公共政策)
   命懸けの勝負が暴く マネーとビジネスに潜むワナ...
   「カイジ」の世界は「不合理な選択」を考慮する行動経済学そのものなのだ!

 内容に関しては実際にご購読いただければ幸いですが、ここで申し上げたいのは「マネー教育」についてです。家族連れで複数回海外赴任した経験から言うと、小中学校の授業科目のうち外国にあって日本にないもの - それは「マネー」と「宗教」です。 まあ「宗教」については置いておくとして、なぜ「マネー」を教えないのでしょうか。西欧諸国の多くは小学校のうちから、1ユーロ札を使って「貨幣」「利子」「市場」などを教え、中学校では株の模擬売買をさせたりします。また中国の小中学校の「労働」という科目では、実際に工場などで働いて賃金を得て、これで好きに買い物をさせます。社会生活をする上で「マネー」を理解しておくことは必要だと思うのですが、日本では「カネはきたない」という意識からか、せいぜい「詐欺に引っかからないように」といった程度の教育しかしていません。
 そこへ行くと劇画「カイジ」の主要テーマはギャンブルです。カネよりさらにきたない、およそ教育的見地からは忌み嫌われる対象ですが、実はここに実体経済のエッセンスが詰まっています。この本のなかから例をあげてみましょう。

Scene4 星1つで200万円は高い?
 ギャンブル船エスポワールでの「限定ジャンケン」で、カイジは生き残りのため「星」を買うという決断をします。しかしなるべく安く買おうと様子を見ているうちに、主催者による買上げ措置(需給引締め)で価格が高騰し、チャンスを逃してしまいます。これはまさに経済学でいうところの「自由市場」における「価格形成メカニズム」そのものです。

Scene5 グーの買占め vs パーの買占め
 進退窮まったカイジはジャンケンの必勝法を思いつきます。それは場に残っている「グー」「チョキ」「パー」の数をカードの買占めによって操作し、勝率を高めようとするものです。これはまさに株式市場における「仕手戦」で、当たれば大きいですが邪魔者が入ると破綻する-という現実の相場そのものです。

Scene30 100%じゃないんだ!
 命を賭けたゲームを強いられている債務者の光山は、「ここで仲間を裏切れば確実に7000万円勝ち、もう1ゲーム続ければ99%の確率で1億円勝ち」という状況で、「1%」のリスク(仲間による裏切り)を忌避して自分が仲間を裏切ってしまいます。これは「1%のリスクを0%にするのが保険で、保険料はそのコスト」というリスクマネジメントの基本です。

どうですか。実体経済はある意味、ギャンブルと本質的に同じでしょう。

 「金など人生の目的にはならない」「金なんかより大事なものはいくらでもある」という言葉はしょっちゅう聞かれます。その通りです。でも「金がなければどうにもならない」ということも動かしがたい事実なのです。かつてある大学で、証券市場論を担当していた教授が「実は一度も株を買ったことがない」と自慢?しているのを聞き、耳を疑ったことがあります。水泳を習うのに「一度も水に入ったことがない」コーチにつくでしょうか。サッカーが上達したければいつもボールに触れていることが必要なのと同様、経済や経営を理解するにはいつもマネーのことを頭に置いておくことが大事なのです。

 結局何が言いたいのかって? これです。
 「静岡産業大学の実物教育を通じて、実体経済・経営を身に付けましょう!」