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明日のための名言


准教授 館 俊樹(運動学、トレーニング科学)

 いわゆる偉人と呼ばれる人たちは、後にその立ち振る舞いや大胆な発言が語り継がれることが多いです。ほとんどのものが、多少の脚色や誇張が入り、時にはまるっきり勘違いだったりするようなものもあります。しかし、多くの場合私は、そのユーモラスな言動や行動にこころをときめかせ、「うそだろう」とか「そんわけないだろう」とか思いながらも、結局は明日への活力をもらったりしています。今回は、そんな逸話の中でお気に入りのものをいくつか、紹介させてもらいたいと思います。

 まずは、ソニーの創立者の一人である故盛田昭夫氏の話です。彼はスピーチをする際、原稿を持つことなく話をすることでしられていたらしく、アメリカで行っていたスピーチで(もちろん通訳は付けずに、英語で行っていました)米国人の記者に「どうしてあなたは原稿も持たずに、こんなにすばらしく情熱的な話ができるのだ?」と聞かれました。その時、盛田氏はまずその記者に「君は結婚しているのか?」と聞き、していると記者が答えると「奥さんにプロポーズしたときに原稿をみながらしたか?人の心を打つためには、下を向いて原稿を読んではだめだ」と返したと伝えられています。しかも、後にソニーの社長となる出井氏によると、彼は英語を得意としていなかったというのですから、彼が人の心打つということをどれだけ重要視していたかがわかります。受け止め方や盛田氏の真意は私わかるはずもないのですが、米国で堂々と発言している彼を想像するだけで、何か私としては勇気がわいてきてしまいます。

 これも、すごく好きな話で、1980年代後半にホンダエンジンがF1で大活躍していたころの話です。当時、ホンダエンジンはそのターボ性能が高く評価されていたのですが、FIA(国際自動車連盟)が1988年に「ターボエンジン」の規制を発表します。これが、当時の日本メディアでは「FIAによるホンダつぶし」と報道されていました。これに対し、本田宗一郎氏は、「ホンダだけがターボ禁止なのか?違うのか、馬鹿な奴等だ。ホンダだけに規制をするのなら賢いが、すべて同じ条件でならホンダが一番速く、一番いいエンジンを作るのにな。で、なんだ話ってのは?」と軽く流したと言われています。こういう話を格好良く感じること自体が私の欧米に対する劣等感の表れなのかもしれませんが、世界を相手にこれだけ自信を持てる先人がいたと考えると、やはり活力がわいてきます。

 他にも、トーマス・エジソンの「成功できる人っていうのは、“思い通りに行かない事が起きるのはあたりまえ”という前提を持って挑戦している。」も心に響きますし、松下幸之助氏の「それは私の責任です。ということが言い切れてこそ、責任者たりうる。」や「人と比較をして劣っているといっても、決して恥ずることではない。けれども、去年の自分と今年の自分とを比較して、もしも今年が劣っているとしたら、それこそ恥ずべきことである。」には身を引き締めさせられます。

 やる気が起きなかったり、あきらめそうになったりするとき、友人や家族、音楽や映画など、様々なものに勇気をもらうのですが、このような先人たちの言動や行動も私の明日をつくる大事な活力源となっています。

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