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親父の話


教授 杉山三七男 (経営管理論、経営組織論)

 今回も代わり映えのしない親父から聞いた戦争の話です。小柄な工兵であった親父は、この話の段階で若い部下がいるポジションにいたようです。それがどのようなものであったのかは、すでに亡なっているので確かめることもできません。いずれにしても、工兵であることから資材や食料の倉庫によく行くことになります。事件は、そのような倉庫に部下を一人連れて入っていたときに起こりました。アメリカ軍による爆撃です。

 ここに、戦場の経験の有無が大きく関わってきます。親父は、工兵であるために戦闘行為はほとんど行っていませんが、それでも敵の攻撃は何度となく経験しているわけです。そこで問題は、攻撃を受けたときにそれがどこを直撃するかです。敵の攻撃を何度も経験していると、少なくともそれが直撃かそうでないかが分かるようになるのです。つまり直撃を受けるときは、その場合に特有の異様な音が聞こえるのだそうです。親父が倉庫に入っていたときに耳にした音がまさにそれでした。そこで親父は、部下に逃げろと言って自らは倉庫を飛び出し、地面にひれ伏しました。その瞬間に爆発が起こりました。部下は、経験が少ない分反応が遅れて直撃を受けてしまいました。倉庫から血まみれになって飛び出してきて防火水槽に飛び込みましたが、そのまま息が絶えたそうです。

 爆発した場合の爆風は、真横の方向にはそれほど進みません。ですから、爆発地点にかなり近くても、地面にひれ伏していればそれほど強い爆風を受けることなく、助かることもあるのです。このようにして私の親父は、その他多くの戦争経験者と同様に、生と死の境目のような所を生き延びてきました。そして現在の私があるのです。