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偽・スポーツ科学入門


講師 館 俊樹(運動学、トレーニング科学)

 健康増進法の改訂、厚生労働省の「エクササイズガイド」発行と国民の健康づくりは、個人だけでなく国家にとっても重要な課題となっています。しかし、運動経験が幼少期からあるものを除くと、「健康のため」という漠然とした目標では運動を継続することが難しいです。そのため、テレビの情報番組や通信販売の広告では「運動嫌いな人むけ」、「簡単」、「○○だけ」等のキャッチフレーズのものが紹介され大きな売り上げを記録しています。もちろん、これらのものの中に確かな効果があるものもあるが、盲目的な使用はかえって健康を害する危険性もあります。

 先日、ゼミナールで思いつく限りのダイエット方法を書き出してみました。「バナナダイエット」をはじめとした同じものを食べ続けるものや、特殊な運動器具を使うもの、視覚的効果を狙ったものや、骨盤をしめつけるもの、脂肪燃焼を促すものと、非常に多岐にわたり、数も100近くあげられました。そのなかには、一応専門家の端くれである私でも皆目検討がつかないものが多数ありました。科学で説明できないからといって効果がないと断定するのは、かなり乱暴ではありますし、かえって真実から遠ざかる結果をまねくことになるかもしれません。

 しかし、科学的に十分に検証されていないものをさも科学的な裏付けがあるかのごとく宣伝するものまた危険な行為と言えるでしょう。2006年に日本物理学会が「ニセ科学シンポジウム」というものを開催しています。これは、物理学者の集まりが科学的には誤っているのも関わらず、表面上は科学を装っているものに対して、どのように対処していくべきかを考えるために催した企画で、当時大きな関心を集めました。

 スポーツ科学にもこのような現象は数多くみられます。例えば、「運動中に水を飲むのは良くない」「女性スポーツで生理不順は当たり前だ!」「走り込みこそが足腰を鍛える」「筋肉痛は使えば直る」「ウエイトトレーニングは使えない筋肉をつけてしまう」これらは10数年くらい前まで日本のスポーツ現場で信じられていたものです。現在でも、「体のバランスを良くするブレスレット」や「パフォーマンスを高めるネックレス」等数多くの「科学を装った」スポーツ関連グッズやトレーニング方法をみかけます。

 実はいうと、このようなものの効果に私は否定的ではありません。仮に、科学的な裏付けがなくても、それらを身につけることによって安心したり、自信が生まれたりするのであれば、十分に有用であると思います。昔、極度に緊張をしてしまう選手に指導者が、ただの小麦粉を「本番で力を発揮する特別な薬」と嘘をついて飲ませたところ、良い結果を残したという例もあります。

 しかし、将来スポーツや運動の指導者をめざす人間は、少し状況が違うと思います。少なくとも指導者として、選手やクライアントにどのような効果があるものを使用させているのか、何故そのトレーニング方法が有効なのかを知った上で指導を行っていく必要があると思います。