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進化学の広がり


教授 大堀 兼男 (生命科学)

 まず、進化論の形成を考えると、啓蒙主義の発生により今までのキリスト教に基づいた固定観から人間中心の進歩観が広がり、それが底流となって進化論が発生したと言えます。したがって、進化論の中には進歩の観念が入り込みやすいことになります。科学的な総合的進化論は、自然淘汰説に基づくダーウィンの進化論です。生物には変異による個体差があり、環境によりよく適応した個体がより多くの子孫を残していくとダーウィンは考えました。また、生物の進化は分岐の原理に基づく多様化であると考え、生物はひとつの共通の祖先から分かれてきたと主張しました。

 ダーウィンの頃は遺伝現象が不明でしたが、その後遺伝現象についての理解が進み、突然変異が遺伝性の個体変異の元であることが明確となりました。したがって、進化は遺伝子頻度の変化ととらえられるようになりました。さらには、遺伝子がDNAという分子であることもわかり、分子レベルで進化を研究する分子進化学が出てきました。この分野では、ダーウィン以来の個体・集団レベルとは異なる進化要因が主張されるようになりました、すなわち、進化の主要因は自然淘汰ではなく、淘汰に中立な突然変異の固定であるという中立説です。

 このように今では、進化の研究について、単なる理論である進化論というよりも総合的な科学研究の対象として進化学という名称が使われています。

 この進化研究が生物学だけでなく異なる分野にも応用されています。一つは、進化的アルゴリズムと呼ばれる計算手法で、様々な問題解決に応用されています。その中にはさらに、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミング、進化的プログラミングなどがあります。 遺伝的アルゴリズムでは、データを個体とみなして、選択、交叉(組換え)、突然変異といった操作を行なって、最適な解を求めていきます。別の分野の応用が進化医学です。この分野では、病気の原因を進化的に考えていきます。ウイルス感染症における発熱、食中毒の下痢、つわり、肥満などの例が進化的に説明されています。また、進化経済学という分野もあります。この分野の進化の概念は、生物学におけるそれと全く同一ではなく、独自に発達した概念があります。以上、進化を対象とした研究は様々な分野に広がっています。