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教員志望の皆さんへ:働き方改革と部活動改革時代を生き抜く教員像


※職位や内容は投稿時のものです

2025年9月16日更新

 教員という仕事は今、大きな変革期を迎えています。長時間労働の是正を目指す「働き方改革」と、部活動の主体を学校から地域へと移す「地域展開」という2つの大きな改革の波が押し寄せています。特に、中学校の保健体育科教員を目指す皆さんにとって、どのような資質や能力が求められるのか、一緒に考えていきましょう。

部活動の地域展開がもたらす変化
 部活動の地域展開は、教員の長時間労働を解消するための重要な取り組みです。これまで教員は、授業やクラス運営、分掌等の事務作業に加え、放課後の部活動指導に多くの時間を費やしてきました。これが地域に移されることで、教員は本来の業務に集中できるようになります。
 
 しかし、ここで一つのジレンマが生まれます。それは、部活動指導に情熱を注いできた教員が、指導の機会を失ってしまうかもしれないという点です。もちろん、地域クラブの指導者として活動する道は開かれています。しかし、そのためには勤務校を管轄する教育委員会から「兼職兼業」の許可を得る必要があります。働き方改革の一環として、兼業は教員の本業に支障をきたさない範囲で許可されるのが一般的で、学校教育活動の一環として情熱を注いでいた指導の機会が減ってしまうかもしれないという現実は、保健体育科の教員志望者にとって悩ましい問題と言えるかもしれません。

 この課題を乗り越え、教員としての本務と地域でのクラブ指導を両立させ、ご自身のウェルビーイングの向上に繋がる資質・能力を以下に記します。

1. 時間管理能力とキャリアデザイン力
 最も重要になるのが、時間管理能力です。教員は限られた時間の中で、効率的に質の高い授業を準備し、事務作業をこなす必要があります。授業準備や日々の業務をいかに効率化できるかが、残業時間を減らし、兼業の時間的余裕を生み出す鍵となります。具体的には、ICT(情報通信技術)を活用した準備や実践、同僚と協力して業務を分担するなど、創意工夫が求められます。

 また、長期的な視点で自分のキャリアをデザインする力も不可欠です。例えば、授業研究に集中する時期、クラブ活動の指導法を学ぶ時期など、教員としての成長ロードマップを描くことが重要です。

2. 多様なステークホルダーと協働するコミュニケーション能力
 部活動が地域に移ることで、指導の主体は学校から地域クラブの指導者、保護者、そして地域住民へと広がります。この新しい環境で、教員はさまざまな人々と円滑なコミュニケーションを築く必要があります。

 学校内では、地域クラブと連携し、子どもたちの活動状況を共有したり、部活動に代わる校内での居場所づくりを検討したりする機会が増えます。地域では、保護者やクラブの運営者と協力して、子どもたちの安全な活動環境を整えたり、より良い指導方法を模索したりすることになります。異なる価値観を持つ人々との対話を通じて、お互いの強みを活かし、より良い教育環境を創出する力が求められます。これは、従来の学校完結型の指導では得られなかった、新しい学びと成長の機会となるでしょう。

「ハイブリッドな教員像」を目指して
 保健体育科教員を目指す皆さんは、新しい時代に合った働き方を創造していく必要があります。それは、単に学校の業務をこなすだけでなく、地域社会の一員として、子どもたちの成長に多角的に関わる「ハイブリッドな教員像」と言うことができるかもしれません。

 学校での本務を効率化することで時間を創出し、その時間を活用して地域で情熱を傾けられる活動に携わる。このサイクルを確立することで、働き方改革の波を乗りこなし、教員としてのやりがいと私生活の充実を両立させることができます。

 教員という仕事は、子どもたちの成長を間近で見守り、喜びや感動を分かち合える、かけがえのない仕事です。ぜひ、自分らしいキャリアをデザインし、充実した教員生活を送れるよう、“今”を大切にしてください。この新しい時代に求められる資質・能力を身につけ、子どもたちの未来を創る素晴らしい教員になることを心から願っています。