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超円安で日本は先進国クラブの最貧国へ?


教授 近藤尚武 (国際経済学、アジア経済)

 私は1980年代末から1990年代初頭にかけてイギリスに留学していたが、当時、日本人の給料は世界最高水準であった。日本人の観光客やビジネスマンは海外で最高級のホテルに泊まり、高級ブランド店で買い物をするのが常であった。留学先で知り合った現地駐在の日本人の証券マンや商社マンは驚くほど高級な一軒家やフラットに住んでおり、貧乏な学生だった私は日本人ビジネスマンの金持ちぶり(海外での)を見せつけられる思いであった。日本人駐在員の奥さんがイギリス人のプロフェッサーの給料を聞いて「安いねえ」と驚いていたのを今でも思いだす。

 あの頃、四半世紀後の日本経済がここまでおちぶれるとは誰が想像したであろうか?一人当たりGDPで見ると、日本経済の相対的強さのピークは超円高であった1995年ごろである。当時の日本の一人当たりGDPは42642ドルで主要先進国では断然トップで、米国の約1.5倍、イギリス、カナダやオーストラリアの2倍以上あった。その後欧米諸国は毎年2~4%の成長率を達成するが、日本はゼロもしくはマイナス成長であった。その結果、2013年、日本の一人当たりGDPは38468ドルで世界24位にまで落ちている。同年、オーストラリアの数字は64578ドル、米国は53001ドルである。私が留学していた当時、日本人が「安い、安い」と言っていた欧米諸国の所得は現在日本をはるかに凌いでいる。

 問題は現在(2014年9月)進行中の超円安である。アベノミクスによる金融緩和の思惑で2012年末以降、80円前後であった円レートは一気に100台まで下がり、その後膠着していたが、2014年の8月から再び急激な円安が始まり、9月末には110円台を記録した。

 4年前の急激な「円高」の際に私が書いたエッセイ「円高の時だけ騒ぐマスコミ」のなかで、1ドル 80円の水準は決して異常な歴史的な円高ではなく、実質実効為替レートでみると妥当な水準であり、むしろリーマンショック前の為替レートが超円安であると指摘した。現在の1ドル110円という水準は、実質実効為替レートでみるとリーマンショック前の超円安時代よりもさらに円安であり、 1982年の 1ドル 278円に匹敵する歴史的な超円安なのである。円の価値は 32年前の水準に戻ってしまったのである。仮に 2014年の平均為替レートが 1ドル 110円の水準ならば同年の日本の一人当たりGDPは34000ドル台にまで低下する。この水準は香港、イスラエル、イタリアより低く、先進国最低水準である。

 もちろん日本で生活している限り、ドル換算の一人当たりGDPが何位になろうが重要な問題ではない。重要なことは、労働環境が改善され、住宅環境が改善され、必要な商品やサービスがより簡単に購入できることである。2014年現在の日本ははたして1982年当時と比べてどうであろうか?皆さん、各自考えてみてください。