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「数独」の国際的な普及に思う


教授 鷲崎早雄 (経営情報学、経済工学)

 「数独」というパズルをご存じの方も多いと思います。9行×9列の行列の中に、1から9までの数字を一定のルールで埋めることができたら完成、というパズルです。このパズルの原型は、1979年にアメリカの建築家Haward Garnsという人が"Number Place"という名前で発表したものです。それをパズル雑誌で有名な日本の書店の社長が洋書店で見つけて現在のルールに改善し、名前を「数独」として1984年にパズル本を発行したのです。

 「数独」は日本のパズル愛好家の間で徐々に人気を高めていきましたが、2000年代に入ってから国際化が始まりました。裁判官をしていたニュージーランド人のWayne Gould氏が、出張で訪れていた日本の銀座でたまたまこのパズル本を見つけ、その魅力にすっかりはまってしまったのです。彼はその後6年をかけて「数独」の問題を作るコンピュータのプログラムを開発しました。

 そしてそのプログラムで作ったパズルが、2004年に英国の新聞"Times"に「Su Doku」という名前で連載されました。この連載は一気に人気が出て英国の他の新聞も連載を始める有様でした。さらにドーバー海峡を渡ってヨーロッパ中に伝わっていきました。その頃になると日本でも、日本は何でも欧米で話題になるとすぐに飛びつく習性があり ますが、「何だか日本語らしい名前のパズルがヨーロッパで流行っているらしい」ということで話題になりました。

 私が「数独」を知ったのもこの頃です。インターネット情報に早耳の友人が大学の同期会のメーリングリストに「数独を知っているか」と言って問題を掲載したのです。同期の仲間はすぐに「数独」のファンになりました。

 その後日本でも一気に人気が出て、例えば私が愛読している毎日新聞の夕刊には毎日「数独」の問題が1問ずつ掲載されています。日頃は典型的な文系人間で大学で美術を教えている妹なども、夕刊の「数独」を解かないと眠れないと言っています。

 アメリカでも「Su Doku」は大変な人気です。例えば大学のBook Storeに行くとたいてい"Su Doku"のコーナーがあります。本の形式であったり、ゲーム機のような形になっていたり、パソコンのソフトになっていたりして売っています。また空港のお土産ショップのような所でも売っています。長旅のお伴にということでしょう。

 この「数独」現象を見ていて私は2つのことを考えています。一つはアメリカで最初に作られ、日本で改良されて普及し、ヨーロッパでデジタル化され、国際的な情報コンテンツとして一気に世界の「Su Doku」となる経緯の面白さです。日本人として気がつかなかったものが、「何か日本語の名前らしい変なものがヨーロッパで流行っているらしいよ」という事が起こる不思議さです。そういう事象を良く観察し研究していくと、それが情報コンテンツのマーケティングという重要な視点を生む材料となると思っています。

 2つめは理詰めにものを考えることの面白さです。毎日が慌ただしく忙しい日々を送っている私たちは、ものごとを考える時にも相当大雑把な程度でしかやっていないというのが実情でしょう。あるルールや前提条件の上で理詰めにものを考えるようなことは滅多にやっていないように思います。そういう生活ばかり送っていると人間はだんだんものを考えることができなくなってきます。

 そうした時に脳は考えることを欲求します。「数独」に魅せられる人が多い理由の1つにはそういうことがあるでしょう。経営学の教育にも理詰めに考える場が必要です。ルールや前提条件を確認すること、それに従って状況に応じて考え抜いていく態度の養成が必要です。経営者は熟慮して断行しなければなりません。熟慮すると言うことはどういうことなのかを経験によって知るような教育が必要だと感じています。

(注)「数独」の歴史はニコリ「数独攻略ガイド」を参考としました。