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ホーム >  応用心理学研究センター >  通信21「近未来の社会」で活躍できる 人材の育成を目指します。

通信21「近未来の社会」で活躍できる 人材の育成を目指します。


静岡産業大学 准教授 藤田依久子

静岡産業大学は、「近未来の社会」で活躍できる人材の育成を目指します。

「近未来の社会」とはどんな社会で、そこではどのような能力が必要とされるのだろうか?
  • 近未来の社会は、社会の変化のスピードが今よりさらに加速するだろうと予想されます。
カラーテレビは、1967年ごろから普及し始め、およそ10年後の1978年ごろ100%の普及率になりました。1970年(昭和45年)には、まだカラーテレビの普及率は30%程度で、ルームエアコンの普及率も10%以下でした。この頃は、電子レンジもなくVTRもなく、もちろん携帯電話やパソコンなどは全くない時代でした。この40年間に我々の生活はすっかり変わってしまいました。特別の人ではない普通の人でも、スマートホンを持ち、パソコンを使い、エアコン、電子レンジといった家電に囲まれた生活を送るようになってきたのです。そうした「モノ」の変化だけではありません。「我々の社会」そのものが、今までとは比べ物にならないほどの速さで変化しています。

  • 「消費者志向社会」「現場志向社会」がより、進むだろうと予想されます。
  • 相変わらず「ストレスフルな社会」が続くだろうと予想されます。
この2つを説明するために、ここでは、社会を「サーバント・リーダーシップ」という側面から見てみましょう。「サーバント・リーダーシップ」とは、1970年代にロバート.K.グリーンリーフが提唱したもので、リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後、相手を導くものであるという実践哲学です。

若い人たちの中には、政治家や公務員になりたいと思っている人がいるかもしれません。公務員でなくても、私立の学校の先生や、鉄道やバスなど公共交通機関や電力会社やガス会社、NTT等の通信会社に就職する人がいるかもしれません。今まで、「公僕」という言葉は公務員の別称として使われてきましたが、こうした仕事も、公の為に行っている事なので、そこで働く人たちは「公僕」(パブリック・サーバント)と言ってもよいのかもしれません。そうした職場では、サーバント・リーダーシップの精神が必要だと思われます。
小売業やホテル業といった、いわゆるサービス業に従事する人も最近では多くなっています。これらの業種もサーバント的な側面があるともいえます。

最近、さまざまな場面で、多くの人が「働く人をサーバント」であると看做す(みなす)傾向が強くなってきました。そして「サーバントなんだから」ということで無理難題を言ってくるということも起こっているようです。

例えば、病院で入院患者が、看護師を「召使い扱い」するということは以前からあったようですが、最近は、医者に対しても「召使い扱い」をする患者が増えているようです。
「働く人は、召使いなんだ」と考える考え方は、消費社会の成熟と深い関係があります。資本主義の発達に伴って生じてきた「お金を払っている人が偉いんだ」という考え方の広まりです。

本学には学校の先生を目指している学生たちが多くいますが、今、学校では「モンスターペアレント」と呼ばれている、いわゆるクレーマーが問題になっています。この人たちは、学校の先生を完全にサーバント(召使い)と考えています。「モンスターペアレント」は、自分たちはお金を払っているので「主人」であり、教員は給料をもらっているのだから「召使い」である、と基本的には考えています。その事から、さまざまな問題が引き起こされています。子供が朝起きられないので、担任の先生に「子供を起こしに来てくれ」と言ってきたモンスターペアレントがいたそうです。

このように社会全体が、働く人を「召使い扱い」をする社会の中でリーダーとして生きていく為にはどうすればよいのでしょう?
リーダーシップ論や組織心理学の授業や心理学系の演習の授業では、受講生に架空のお店の店長さんになってもらい、次々に起こる事件に対して、てきぱきと決断を下していく、というロールプレイングゲームを行ったりもしています。こうした職業に就く人は、人々が喜ぶことに自分自身の喜びを見出す事が出来る人でないと長続きしないし、楽しく働く事は出来ないでしょう。そして、単なるサーバントではなく、サーバント・リーダーになるためには、「明確なビジョンや戦略」を持たなければならないとも思われます。

東京ディズニーランドで働いている人たちは、自分たちが「遊園地」で働いているという感覚はもっていないようです。自分達は「夢の国の住人」で、ディズニーランドに来て下さるお客さんに、「笑顔を届ける仕事」をしていると思っているそうです。これがビジョンです。東京ディズニーランドでは、従業員の人たちが本当に楽しそうに働いています。ディズニーランドのファンの人たちの中には、アトラクションを見たいとかではなく「ディズニーランドで働く人たちを見たい」と言ってここを訪れる人がいるくらいです。

今の時代は顧客志向、現場志向が強まっています。行政組織においても、かつてのような「威張った役人」や「無愛想な公務員」は、もうほとんどいません。時代は、サーバント・リーダーを求める時代になっているのです。ただ、こうした時代の流れについていけない人たちは、「仕事」がとてもつらいものになるでしょう。職場で出世すればするほど「サーバント的になっていくのを見ると、若い人の中には、「リーダーにはなりたくない」「リーダーになっても苦労ばかり多くて何もいいことはない」と言う人たちが増えています。

静岡産業大学では、学生たちが、時代の変化を捉えた上で、この社会の中でリーダーとして活躍していただきたいと考えています。その為には、心理学を勉強し「人の心が分かる人間」にならなければなりません。近未来の社会では、「人の心が分からない人、人の心に関心が無い人」は、リーダーには、なれないでしょう。たとえそのような人がリーダーになることがあったとしても、その人にとってリーダーである事はつらい事で、苦労する事になるでしょう。
このように見てくると「消費者志向社会」は、働く人にとっては「ストレスフルな社会」であるといってもよいかもしれません。働く人一人ひとりが、ストレスマネジメントを必要とする時代になっているのです。

こうした近未来社会の予想から、こうした社会に必要とされる能力について考えてみましょう。
近未来の社会で必要とされる能力の一つは、自分の周りの人たちと良好な人間関係を築くことができる能力です。もう一つは、世の中の動きが読める能力です。さらに、独創的なアイディアが出せる等、「キラリと光る個性」を持っていることも必要です。