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通信13「スポーツコーチングとコーチング」


静岡産業大学 特任講師 山田悟史

コーチングでは、「答えは相手にある」という立場をとる。だから教えるのではなく、話しを聞いたり質問したりする事により、相手の中にある答えを引き出し、気づかせていく。そのようなコーチングがスポーツコーチングでも重要であるという例として、以下のような話がある(ティム・ガルウェイ「インナーゲーム」)。

テニスのコーチを、事情があって畑違いのスキーのインストラクターにお願いした。その結果、思いもかけない大きな成果をあげたのである。スキーが専門のコーチは、テニスのことについてはよくわからないため、選手に色々と質問をしたのである。選手は質問されたことにより、自ら考え、大切な事に自ら気づく(思い出す)事により、より高い効果を得ていくわけである。

以上の話からスポーツコーチングにおいても、コーチングで行われる「教えるのではなく、答えを引き出す」というスキルが重要であることはわかる。例えば、先のコーチが「この練習は何のための練習?」と質問すると、選手は「この練習は○○を身につけるための練習です」と答えるだろう。そしてコーチが「そのためには何に気をつけて練習すれば良いのか」という質問を行えば、「こういう所に気をつけて練習をします」と答える(だろう)。このような働きかけにより、今まで漫然と練習に取り組んでいた選手は、やるべき事に気づき、高い意識での練習が可能になることが少なくない。

このことをもって、スポーツコーチングにおいても「教えない」ことが大事であると短絡的に考えることが少なくない。しかしながら、スポーツコーチングでは「教える」ことも重要なスキルである。大まかに言えば、上記のようにある程度経験のある人には「教えない」方法を主に行い、初心者では「教える(指示する)」事を主に行うのが良いとされる。初めてテニスを習いに来た人に「どうすれば良いと思いますか」などと質問をするのはやはりナンセンスである。よく新聞等で目にする、新入社員へのアンケートでも「適切な指示がもらえない」事がモチベーションを下げる要因になっている事からもそのことは伺える。「1分間マネジャー」の著者ケン・ブランチャードの言い方を借りれば「熱心な初心者」に対しては適切な指示が必要ということである。

コーチングでは「教えない」ことが重要であるが、スポーツコーチングでは「教える」ことと「教えないこと」の適切な使い分けが重要である。スポーツコーチングはコーチングのスキルを含むが、その範囲やスタンスは共通部分は多いものの、やや異なるということを理解していただければ幸いである。