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通信9「ボディマッピング」


経営学部講師 藤田依久子

「私にはウエストがありません」

このように言うと「それは気の毒に!」と同情されるかもしれませんね。「毎日、腹筋のトレーニングをやってください」とアドバイスをしてくれる人がいるかもしれません。
ここで私が言いたいのは、私がメタボ体型であるかどうかではなく、人が自分の体に対して持つ具体的な体のイメージについてなのです。
服にはウエストが存在しますが、実は人間の体にはウエストはないのです。つまり、解剖学上は人体にはウエストは存在しないという意味です。 ウエストというのは、人類の文化の産物なのです。

我々は、自分自身の体について、各部位の位置、大きさ、機能等について無意識に認識しています。いつも軽自動車を運転している人が、バスやトラックを運転すると何か、いつも違う違和感を感じます。これは、軽自動車に乗っているときの自分の体と、バスやトラックを運転するときの体の大きさが違うための違和感なのです。

自分自身の体について認識することを“ボディマッピング”と言います。驚くことに、多くの人の“ボディマッピング”は、現実の身体とは違っているのです。
例えば、「あなたの腕には関節が何個ありますか?」と質問すると、多くの人は、「手首と肘と肩の三つです。」と答えます。しかし、実際は腕には関節は四つあります。もうひとつの関節は、鎖骨と胸骨の間にある胸鎖関節です。胸鎖関節より先を腕というのです。
ボディマップが、実際の身体と違っていても日常生活にはたいして問題にはなりません。しかし、スポーツや楽器の演奏をする場合、これが適切でないと、よいパフォーマンスは期待できないでしょう。腕は肩からと考えている人と、腕は胸鎖関節からと考えている人とでは、腕の動かし方に明らかな差が出てしまいます。意識されない部分(この場合は胸鎖関節ですが)は、いくら練習しても動きの改善は期待できないのです。

技が上達するのは、改善点を意識して練習を繰り返すからなのです。 これまで述べたのは、身体と認識の繋がりについてでした。しかし、このことはもう少し広げて考えることが出来そうです。 スポーツの試合で、「出来るだけ頑張ります」と言っている選手よりも「この試合は絶対に勝ちます」と言っている選手のほうが、本当に勝ちそうに思えます。
コーチの中には「私たち(私)は、絶対に勝つんだ」と選手に繰り返し暗示をかける人がいます。意識とパフォーマンスの関係をよく知らない人は、これを見て「スポーツをやると傲慢になってよくないんじゃないか」と考える人がいるかもしれません。しかし、そうではありません。これは心理学をスポーツに応用しているのです。