グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  応用心理学研究センター >  通信5「学習性無力感 ~勉強をすればするほどできなくなる・・・?~」 

 

通信5「学習性無力感 ~勉強をすればするほどできなくなる・・・?~」 


静岡産業大学 講師 藤田依久子

象は、子供の時に足に重い鉄球を鎖で結び付けられると、大人になっても暴れたりしないそうだ。鉄球を付けられた子供の象は、暴れても自由に動けない。このことで子象は、暴れても無駄であることを学習するのである。実は、大人の象の場合は、それくらいの鉄球では、物理的には、その動きを封じることはできない。しかし、子供の時に鉄球で動きを封じられた象は、大人になっても鉄球を付けられると、自由に動けないと思ってしまうのである。また、子供の時に鉄球を付けられて育つと、おとなしくしている状態が象の生活の中で支配的になり暴れたりする行動が起こりにくくなるのだろう。ストレス回避困難な状態に長期間さらされた人も、やがてその状況から逃れる努力さえしなくなる事が知られており、このような事は人間にも起こりうる。

学習過程で我々は試行錯誤を繰り返す。その中で成果をあげたり、ほめられた事が強化され、そうした行動が起こりやすくなる。ところが、試行錯誤をいくら繰り返しても全く成果が得られないとなると、試行錯誤すること自体をやめてしまうのである。この事を心理学では「学習性無力感」という。1967年セリグマンとメイヤーが実験によって確認し発表した。この「学習性無力感」は、人間の場合には他の動物に比べてかなり個人(個体)差があることが知られている。トーマス・エジソンは、白熱電球を完成させるのにおよそ2,000回の失敗をしている。しかし、彼はそれを失敗だとは考えず、「およそ2,000回の試行錯誤が一つの成果を得た」と言った、といわれている。

個人が無力感に陥るかどうかを考える際、個人が自分の置かれた負の状況をどのように認識し、また将来をどう予測するのか、さらに、その無力感の原因を何に求めるのか、に着目することが必要であるとされている。無力感に陥った人にとっては、自分がこれらに対してどのように結論を出し、自分なりにどう解決したのかを再考することが、無力感から脱する一つのきっかけになり得る。我々は、日々の生活の中で、「自分には○○はダメだ、出来ない、無理だ」と思い、無力感を感じることは多い。しかし、子供の時に足に鉄球を付けられた象のように、単なる思い込みに過ぎない事も少なからずあるだろう。