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サッカーファンは本当に幸せになれない??


 現在(平成30年6月27日)、ロシアでFIFAワールドカップが開催されています。世界中のサッカーファンを熱狂させるこのイベントに、毎晩、寝不足になっている方も多いのではないでしょうか。本学にも眠たそうな顔をしている学生がかなりいる気がします。私自身も、磐田に住み始めて2年と少しを迎えますが、ジュビロ磐田を応援するようになり、今年からはフルシーズンチケットを購入するまでになりました。サッカーには、私の心を揺さぶる何かがあるようです。
 そんな中、5月にイギリスにあるサセックス大学の研究者らが「サッカーファンは幸せになれない(Football makes fan less happy)」という非常に挑戦的なタイトルで研究を発表したのです。この研究内容が、インターネット、特にソーシャルネットワークに取り上げられた後、反響をよびました。私自身もツイッターなどのソーシャルネットワーク上での反応を確認しましたが、ネガティブな反応(研究成果に疑いを持っている)の方が勝っていたように思います。
 この研究結果は、「林先生が驚く初耳学!」でも取り上げられ、サッカーファンの揺れ動く感情の激しさが世間に驚きを与えたようです。それでは、どのような研究だったのでしょうか?ここでみなさんにこの研究を少しご紹介しましょう。研究者らは、定期的にサッカーを観戦するファンを対象に、Mappinessという測定アプリを用いて、試合後の感情と幸福感を測定しました。この感情と幸福感は、回答者自身が判断する主観的なものです。この結果、応援しているチームが勝った時には、幸福度が3.9ポイント上がり、負けた時には、14ポイント下がることがわかりました。そして、研究結果のまとめとして以下のように述べられています。

 「サッカーファンを続けることにより受ける累積的影響は、圧倒的に負のものである。」(https://gigazine.net/news/20180501-football-makes-fans-less-happy/から引用)

 本当にサッカーを心から愛するファンは幸せになれないのでしょうか。ここでは、そのイギリスの大学が発表した研究を一緒に「注意深く」見ていきたいと思います。まず、幸福度には長期的な幸福度と短期的な幸福度の二種類があると言われています。紹介している研究では、短期的な幸福度を測定しています。短期的な幸福度の特徴としてあげられるのは、その時の状況などによって変化しやすいことです。極端な例を言えば、その日の天気が雨だったので何となく寂しいと感じるといったことです。このような人間の変化しやすい感情を心理学では情動(affective state)と呼ばれています。つまり、この研究はスポーツファンの情動を測定したものであり、そのレベルでは累積的影響は負になりやすいと言えるでしょう。
 しかし、この研究ではスポーツ観戦が長期的な幸福度に与えた影響に関しては明らかになっていません。この研究がインターネットで発表された時、少なくないスポーツファンが否定的な意見を持ったのも、彼らは経験的に自分は幸せだと思っているからでしょう。昨年、私の研究室で行った研究では、ジュビロ磐田の観戦者はスポーツ観戦を重ねるごとにスポーツファンとしてのアイデンティティが確立され、幸福度を感じやすいことを実地調査レベルで明らかにしました。少し難しい話になりますが、この研究によりスポーツ観戦と個人の長期的な幸福度には正の相関があることが確認されました。今年度、静岡産業大学特別研究支援に採用された研究では、心理学、経済学の専門家と一緒にこの研究を発展させていく予定です。発展する静岡産業大学のスポーツビジネス研究にぜひご注目ください。