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考えるための道具を使って、考える力を身につける


特任講師 齋藤 智世 (教育の情報化、情報教育、教育工学)

A.png 「考えるための道具」そんな道具はあるのでしょうか。黒上晴夫さんは「シンキングツール」という名前注1)をつけています。加藤昌治さんは「考具」という言葉を用いて、21の「考えるための道具」を紹介注2)しています。付箋紙に考えを書いて並べて、レポートの構成を考えた経験はありませんか。1枚の紙も使い方しだいで考えるための道具になります。

Aは基礎ゼミで使っているものです。「えっ!?これ?」と驚くかもしれませんね。3列×3行の表ですが、考えるための道具になるのです。

◆ 「考える」ということ

政府は大学で、”どんな環境でも「答えのない問題」に最善解を導くことができる力(課題探求能力)”を養ってもらいたいと考えています注3)。答えがない(解は1つではない)ので、自分で考えて最も善い解を判断するのです。この先の社会がどうなるか予測が難しい時代を生きていくには、生涯学び続ける必要があり、主体的に考える力が欠かせないのです。最善解を求めるために、問題は何かを明らかにして、原因を見つけ、解(問題解決の方法)を決める...既存の知識だけでは無理ですね。自分が持っている知識や収集した情報を整理し、比較したり、関連づけたり、実験して確かめたりして、組み立てて(構造化し)、分析して、新たな解釈を下していく過程が必要です。その過程や行為が「考える(思考する)」ことになります。「思考という働きは、観察や記憶によって頭の中に蓄えられた内容をいろいろ関係づけ、新しい関係を作り出す働き」注4)とも言われています。思考にもいろいろな種類 があります。系統立てて考えを収束させていくロジカル・シンキング(論理的思考)、自由な発想で考えを拡散していくクリエイティブ・シンキング(創造的思考)、本当に妥当なのか、筋が通っているか、別の考え方はないかなど複眼的に考えるクリティカル・シンキング(批判的思考)もあります。私たちは、日頃、物事をしっかりと考えているでしょうか。

◆「考える」ことを支援する道具
実はこの「考える」という行為には、考えるための方法や技術(思考スキル注5))があります。関連づける、比較する、順序立てる、理由づける、構造化する、類型化する、推論する、多面的に見る、アイデアを出す・・・などです。しかし、思考スキルを使って、頭の中で考えているだけではうまくいかないことがあります。この思考を手助けしてくれるものが、シンキングツール「頭の中の情報を書き込むための図形の枠組み。頭の中にあるイメージや情報を外に出すことを促し、視覚化されたものの関係性をみつけやすくしてくれるもの」注6)なのです。

 文字で表現した文章ではわかりづらい内容も、表にすれば情報が整理されてわかりやすくなります。四角、丸、線、矢印などを用いて組み合わせた図で表すと、変化や順番、原因と結果、対立、並列、交差、包含などの関係性、総合(全体)と個別(詳細)という構造・階層をイメージさせて、内容把握の手助けとなります。複雑な関係もわかりやすく表現できるのです。Bはベン図、Cは幹と枝をイメージした樹形図、Dは階層を表すピラミッド図です。見たことがありますよね。頭の中でアイデアが出ない、整理できない、グループ化できない、関係性がもやもやしている、まとまらない...そんな時には、図解の良さを利用したこれらの道具を使って、頭の中にある思いや考えを視覚化していきましょう。
Bの2つの円の一部を重ねた形は、同じところ、違うところを書き分ける場所を示しています。考える方向「2つの事柄を比較して、共通点、相違点を見つける」や手順「見つけた結果を整理して書き込み、関係性を明らかにする」を示してくれているのです。
Aはマンダラートと言い、研究のテーマを決める時に使います。中心から放射状に広がる形が仏教の曼荼羅に似ているのだそうです。真ん中の枠にテーマを書き入れ、その周りの8つの枠に関連語やアイデアを書きます。思考を拡散させる時にも、思考を収束させる時にも使えます。枠に5W1Hなどの視点を与えることもできます。
Eは3列×2行の表ですが、1行目に項目名としてPlus、Minus、Interestingと書くと、1つの事象を複数の視点で分析・評価するときに使うPMIシートになります。いい点(Plus)と悪い点(Minus)という単純な分け方では抜け落ちてしまう情報を、分類できない要素(PにもMにも入らないが興味深いところ Interesting)として記す場所が用意してあります。3つの視点に限定しますが、制約条件を設けることで大事なものを選んで焦点化することができます。この3視点を、知っていること(What I know)と知りたいこと(What I want to know)と学んだこと(What I learned)にすれば、自分の学びを整理するKWLシートになります。田の字型にして、4つの枠に強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の視点を与えると、戦略を練る時のSWOTシートになります。このように、図の中に考える視点を文字として添えると、考える方向を限定することができ、その視点で考えて、気がついたこと、見つけたこと、わかったことを整理することができます。
シンキングツールには、身近なものを模した形もあります。例えば、魚の頭と骨の形をしたフィッシュボーン(魚骨図)。頭の部分に問題や結果を書き、その原因や要因が関係する可能性のある言葉を太い中骨に書き、その視点で原因や要因を考えて細い骨部分に書きます。仮定条件とその予想と理由を書くキャンディ・チャート、中央に話題を書き左右の羽に賛成や反対意見を書き入れるバタフライ・チャートなどもあります。興味を持った人は、ぜひ解説本注7)を見てみましょう。シンキングツールの印刷用PDFファイル注8)がダウンロードできます。


注1)「シンキングツール」は、黒上晴夫さんの登録商標です。
注2)加藤 昌治「考具 ―考えるための道具、持っていますか?」CCCメディアハウス 2003年
注3)文部科学省「第2期教育振興基本計画」2013年
注4)新学社「思考力とは」http://www.sing.co.jp/school/practice/forum10-2.html (2016/2/28閲覧)
注55)思考スキル:思考の結果を導くための具体的な手順についての知識とその運用技法(出典:注5と同じ)
注6)、注7)黒上晴夫、小島亜華里、泰山裕「シンキングツール~考えることを教えたい~」NPO法人 学習創造フォーラム 2012年
※PDFファイルがhttp://www.ks-lab.net/haruo/thinking_tool/short.pdfにあります。
注8)印刷用シンキングツールtools_worksheet.graffle
※PDFファイルがhttp://www.ks-lab.net/haruo/thinking_tool/for_print.pdfにあります。