グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  リレーエッセイ >  情報過多の中で、必要な情報を見つけるために

 

情報過多の中で、必要な情報を見つけるために


特任講師 齋藤 智世 (教育の情報化、情報教育、教育工学)

 あなたは昨日のニュースを何のメディアで知りましたか?

 紙の新聞ですか?テレビやラジオの放送ですか?テレビのdボタンを押すと表示されるデータ放送ですか?有料あるいは無料の新聞社ニュースサイトですか?Yahoo!ニュースやSmartNewsなどニュース配信サービスですか?それとも、友達からのお知らせ?

 ニュースを知る方法も今や多種多様。伝えられるニュースの内容も同一ではありません。同じ事件についてのニュースであっても、自分が知っている内容と友達が知っている内容が同じとは限りません。それぞれつかんでいる情報が違うのが当たり前の現代です。

◆情報活用の実践力を身に付けたい
 私たちが生きている情報社会は、価値ある情報を創造・生産、流通、消費して発展している社会です。「もの、人、金」に加えて、情報も大切な資源であり、財産です。そんな情報社会を生きていくには、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達する能力(情報活用実践力)がとても重要になります。

 ところが、情報を扱う最初の一歩である情報収集さえ、大変な労力を必要とします。「そんなことないよ。昔は調べることがとても大変だったようだけど、今は知りたいことがあったらすぐにスマホで調べられるよ。簡単だよ。」という声も聞こえてきそうです。確かに、図書館へ行って本や資料を使って調べる機会は減りました。パソコンさえあれば、いやパソコンの前に座らなくても、会話中や待ち時間などのちょっとした時間でも携帯電話やスマートフォンなどのモバイル端末で簡単に調べることができます。

 Googleで検索することを意味する「ググる(googling)」という言葉は、日常的に使われています。わからないこと、知りたいことがあると、すぐに検索サイトを使ってネット調べをすることが習慣になっている人がとても多くなっています。でも、あなたは、本当に必要な目的の情報を見つけられているでしょうか。

◆情報オーバーロード
 情報社会の到来とともに情報は飛躍的に増えていきました。

 日本のパソコン世帯普及率が15%を超えて、一般家庭に徐々にパソコンが広がりはじめたのは1995年頃。インターネットの人口普及率が7割を超えたのが2005年。1996年から2005年までの10年間で、1年間に情報消費者が選択可能な形で提供された情報の総量(選択可能情報量)は360.9倍となっています。その前の10年間(1986年~1995年)は1.9倍なのですから、選択可能情報量は爆発的に増えたわけです。ところが、1年間に情報の消費者が実際に受け取り、消費した情報の総量(消費情報量)を見てみると、1996年から2005年までの10年間では10.9倍です。その前の10年間(1986年~1995年)の1.6倍に比べれば消費情報量は増えていますが、選択可能情報量に比べるととても低い値になっています。

 インターネット人口普及率が46%だった2001年と、79%となる2010年を比べてみましょう。それまでとは違う計算方式で算出した値ですが、情報受信点まで届けた情報量(流通情報量)は2.0倍、情報消費者が受信した情報の内容を意識レベルで認知した量(消費情報量)は1.1倍です。「あれ、そんなに増えていないのかな。」と思われるかもしれませんね。複数メディアの合計としてはそれほど増えていないように見えますが、インターネットによる流通情報量は72倍と急増しています。では、インターネットによる消費情報量はというと、2倍にとどまっています。2009年のインターネットによる消費情報量は、その年のインターネットの流通情報量の0.05%でしかありません。複数メディアの合計では、消費情報量は流通情報量のわずか0.004%です。爆発的に増加する情報量を前に、人間はそのほんの一部しか消費していないのです。情報過多時代です。

 情報過多のことを「information overload(情報オーバーロード)」と言っています。「情報オーバーロード」は、大量の情報を受け取ることで、情報をストレスやエラーなく効率的に処理できる限界を超えた状態を指した言葉として使われています。情報はたくさんあるのに、欲しい情報が見当たらず、精神的に疲れてしまう...今はそんな時代なんですね。だからと言って、情報収集を短時間で適当に切り上げ、容易に見つかった情報だけで満足していればいいと言うわけではありません。収集した情報は、その後のあなたの行動の方向性を決めるための判断材料になるからです。

◆情報の収集
 レポート作成にあたって、必要な情報を十分に収集しているでしょうか。
 膨大な量の情報から必要な情報を見つけてくるという情報収集活動は、とても時間と労力が必要となる大変な作業です。2014年9月には世界中にあるWebサイトの数が10億件を超しました。2015年3月では12億件を突破しています。幸い、検索サービスを提供するサイトでは、クローラーというロボット(プログラム)が世界中のWebサイト情報を調べてデータベース化してくれています。私たちがキーワードを入れれば、キーワードにマッチングするWebページを、重みづけをして順番に表示してくれます。

 「ググれば、すぐに見つかるさ。」と思っているあなた。本当に必要な情報を見つけていますか?

 検索結果でリストアップされるWebページの数は膨大です。例えば「情報オーバーロード」で検索すると約758,000件、「情報オーバーロード 意味」で検索すると約583,000件、「情報オーバーロード 意味 原因と対策」とキーワードの数を増やして絞り込みをしても約469,000件です。そのすべてに目を通せますか?無理ですよね。リストは5ページ目ぐらいまでちゃんと目を通していますか?リストの1ページ目に表示される10件ぐらいはちゃんと紹介されたWebページの内容を見て確かめていますか?キーワードにマッチングしたWebページだけを見るのではなく、そのWebページを含むWebサイトについても見ていますか?情報の発信者の確認や周辺情報を知ることも大切です。「情報オーバーロード」について知ろうとしたら、類似の言葉「情報爆発」や「情報洪水」についても調べておかないと。

 最近は「NAVERまとめ」のように、ある話題や視点で情報を集約して提供してくれるまとめサイトもあります。情報は最初から絞り込んであって便利だと思うかもしれませんが、まとめサイトを見ただけで情報収集を終了しては、編集者の意図を反映した偏った情報だけに接する危険性があります。

◆情報の評価・判断
 情報が収集できたら、次はそれを評価し、必要かどうかの判断をします。その内容をじっくり読んで、正しい情報か、必要な情報か評価・判断し、収集した情報を取捨選択しましょう。

 テレビや新聞などのマスメディアや公的機関などが情報を発信する場合、発信前にコストをかけて情報を吟味し、価値を選別しています。信頼性が高い情報と言えます。総務省の2013年調査でも政治・経済・社会問題では85%程度の信頼度を得ています。このような情報は、真偽を確かめる必要性をあまり感じないのではないでしょうか。しかし、情報は意図をもって編集されています。情報に偏りがあるかもしれません。複数の情報源から提供された情報を使って比較したり照らし合わせたりして、信ぴょう性や正確性を確かめる必要があります。信頼性が高い情報であっても、さまざまな観点や資料で照らし合わせて内容を確認するクロスチェックを行いましょう。

 ニュースまとめサイトや「リツイート」のように、別の人が発信した情報を自分の発信の中に引用の形で取り込んで情報を拡散させていることがあります。引用元情報が表示されていると思いますので、引用元つまりオリジナルの情報にあたるようにしましょう。引用元の情報の一部が切り取られて拡散していくと、元の情報が持つ意図が失われたり曲解されたりしている場合があります。「オリジナルな情報に当たれ!」心に留めておいてください。

 一方、twitterやfacebook、LINEなどソーシャルメディアを通じて得た情報は、発信前に情報を十分吟味している保証はありません。信頼度が低い情報です。先の調査でも、ソーシャルメディアの信頼度は27%、ブログなどでは17%です。その情報が本当かどうか、偏っていないか、情報の真偽や価値を、自分の頭で考えて、きちんしたやり方で判断する必要があります。Critical Thinking(批判的思考)をする必要があるということです。

 残念ながら、記事=広告だったり、偽情報だったり、デマだったり、詐欺だったり...、質の悪い情報は存在します。ソーシャルメディアの増加は、信頼度が低い情報を評価し判断するという、受信者側の負荷を高めることにつながります。情報の発信者名が明示されているか明確かということも、情報の信頼性を高めるために必要な指標です。

 時々、レポートを作成する場合に、主張の根拠や用語説明でウィキペディアの情報をそのまま資料として使っている人を見かけます。調べ始める最初の手がかりをつかんだり、下調べとして大まかな内容を知るためにウィキペディアを利用するのはかまいません。詳細な専門的知識が書かれている場合もあります。しかし、ウィキペディアは、基本的にいつでも誰でも書き換えることができる情報です。文章を書いた責任(文責)が誰にあるかわかりません。文責が明らかで、信用に足る情報を、根拠を示す資料として使いましょう。

 なお、情報がいつの時点で発信されたものなのかも大切なチェック項目です。特に調査した結果の資料の場合、いつ、誰に対して、どのような方法で調査したかを確認します。その情報が古くて現状を言い表す妥当性に欠けたり、資料としての価値を下げてしまうものかどうかの判断もしっかり行いたいものです。

◆長期間の保管に耐える質の高い情報も、ぜひ情報収集の対象に!
 インターネットを利用した情報収集、判断について、語ってきました。しかし、Webページは、流動的で、新しい情報を提供することが容易にできるメディアです。逆に突然情報が消えてしまうこともあります。書き換えられて、内容が変化することも多々あります。資料として使うためには、出所を示すURL(https://www.ssu.ac.jp/department/management/teacher_tomoyo_saito.html)や閲覧日を添えることを忘れないように。

 レポートを作成する場合は、新聞、雑誌のように比較的新しい情報を提供するメディアの利用や、論文や出版された図書、辞書・事典のように長期間の保管に耐える質の高い情報もぜひ情報収集の対象としてください。

 OPACで図書館の蔵書検索をしたり、ネットの書店サイトで本の批評を読むことも情報収集の有効な手段です。実際に書店や図書館などの本棚の前に立てば、キーワード検索では見つけることができないような情報に出会うことができます。ぜひ、やってみましょう。

 また、学術的資料となる論文や図書などには、参考文献、引用文献が書かれています。そんな文献情報が次に情報を探す手がかりになります。見つけた情報をたぐっていって、次の情報に出会うような芋づる式の検索も大切です。


 収集した情報は、精読して、内容をしっかりと吟味・把握しましょう。
学生時代こそ、情報活用実践力を高めたり、Critical Thinking(批判的思考)を身に付けるいい機会です。安易な情報収集にとどめるのではなく、深い情報収集に取り組んでみてください。