グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  リレーエッセイ >  「スワジランド王国は世界のどこにあるの?」

 

「スワジランド王国は世界のどこにあるの?」


特任教授 山﨑克雄(国際経営、経営戦略、中小企業)

 スワジランドは2010年にワールドカップが開催された南アフリカ共和国(以下、南アと呼ぶ)の北東部に隣接し、モザンビークとも接する内陸国である。同国は国王を国家元首とする絶対君主制の様相を呈し、1968年にイギリスより独立した英連邦加盟国である。また人口は107万人で、面積は静岡県の2.2倍の17,363平方キロメートルなので、人口密度は当県の約1/6と少ない。在留邦人が14人、在日当該国人数は2人で、同国の大使館は日本になく、在マレーシア大使館が兼轄する。(いずれも外務省のホームページより)

 スワジランドの国民総所得(GNI)は35.2億ドル(2011年世銀報告)なので、一人当たりGNIは3,300ドルとかなり低い。更に問題は所得や資産の分布の不平等度を表す指標であるジニ係数が高く、国民の1/3は最貧民層である。南アにおいてアパルトヘイト(黒人隔離制度)が実施され、先進国が経済制裁を加えた時代に、それを回避するために南ア企業がスワジランドに進出し工業化が進んだ。その代表例がコカコーラ社で瓶詰め生産をしている。下記の左の写真は回収された空瓶を溶かす加熱炉のあるガラス細工工場内風景である。

 同国は東南部アフリカ共同市場体(COMESA)に加盟し、ナミビア、レソト等と共に南アの共通通貨圏(ランド圏)に所属している。同国の通貨のリランゲーニ(複数形:エマランゲーニ)は、ランドと同一交換価値に設定されているので、同国では使用可能であるが、多くの南アの店舗ではリランゲーニは使用できない。

 私は2010年に文部科学省の科学研究費助成を受け同国を訪問し、ファスナーでは世界のトップブランドのYKK株式会社の工場を見学した。同社は非上場企業であるが、上場企業を含めて国際化の進んだ日本を代表する1934年創立の企業である。同社は二大事業体制であり、創立以来の本流事業であるファスニング事業に加え、建材事業[YKK AP(株)経営ではあるが、連結決算上はYKK(株)に包含される]から形成される。

 YKKスワジランド社(正式にはYKK南ア社のスワジランド工場)は、日本から進出している唯一の企業であり、設立は1976年、払込資本50万米ドルのYKK100%出資の子会社である。南アのアパルトヘイトは1948年に国家政策として採用され、それに対する先進国の経済制裁は1980年代に入り開始され、1993年10月の国連総会決議のあと撤廃された。YKKは早くからグローバル戦略を確立する中で、南アがアフリカ市場では最大を誇るゆえに、将来を見据えて同国を避けスワジランドに海外投資をしたものと考えられる。

 同社の工場従業員数は131名(2010年の訪問時点)であるが、工場長は南ア人である。下記の右写真は訪問時に工場長、2名の日本人社員(右端1名はYKK南ア社の営業部長)と一緒におさまったものである。日本から赴任している社員の1名は技術部門長として工場長を支えつつ、YKKの品質重視のもの作りを徹底している。同社の従業員欠勤率は平均1.5%と、途上国の日系企業としては低いが、ほとんどがHIV感染によるものである。同社では2006年からHIVを抑える薬を無料で供与するようにした。その結果2008年は9名がHIVで死亡したが、2009年はゼロと格段に向上した。同国のHIV感染率は世界一と言われ、公表数字は15歳~49歳人口の26%が罹患している。

 YKK社はアフリカで、同国以外にエジプト、チュニジアならびにモロッコで生産をしており、4カ国で海外投資をする世界で唯一のメーカーである。アフリカは実質GDP成長率が世界平均を上回る水準で安定的に推移する見通しであるので、現在はグローバルビジネスのフロンティアであり、また今後は世界的に残された最大市場と考えられる。日本貿易振興機構の調査では2012年のアフリカ進出日本企業は333社であるが、YKK同様に頑張る日系企業が増えることを期待したい。