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グロ−バル化時代の大学教育を考える


教授 森戸幸次 (国際関係・地域研究論(中東・アラブ地域)、時事アラビア語)

 夏休みの大学は今、進学先を考える高校生や保護者向けのオ−プンキャンパスが花盛り。受験生にとっては、自らの潜在力を引き出してくれる大学をうまく選べるかどうか、大学にとっては、入学を受け入れる若者をしっかりと成長させて実社会から必要とされる有為の人材を送り出すことができるかどうか、が試されている。

 今日の社会は、大学を卒業しても2割の若者が就職できない厳しい現実に直面しており、学生は何のために学び、大学は何を提供できるのか、社会的責任を有する大学教育のあり方が問われている。

 21世紀のグロ−バル化時代が本格化し、私たちは全く未知の世界に突入した感がある。経済を中心にヒト,カネ、モノ、情報が地球規模で動き回り、国境開放、規制緩和・撤廃に向かう自由化の流れが加速、経済だけでなく、政治、社会、文化・文明などさまざまな関連分野が緊密化する中、ますますグローバル化する世界がいったいどのようなものになり、これからどんな問題が生まれてくるのか、だれにも分からないのが現状だ。政治家や専門家でさえ、次々に生起する危機の対応に追われ、これに対処する有効な方法をなかなか見いだせず、私たちは日常、何を「道しるべ」に生きていくのか不安な時代を迎えている。

 こうしたグロ−バル化の「変化の時代」に、私たち一人一人が自らを自覚してより善く生きて行くためには、現実社会を正しく理解できるしっかりした「ものの見方」を身に付けることが大切だ。私たちの人生でこれまで通用していた考え方やものの見方では解決できない問題に次々に直面し、これまでの考え方に疑問と限界を感じ、新しい考え方へと発展していくことができれば、これは正しい「ものの見方」を身に付けたことになるだろう。現実の人間社会を理解するために必要な「変化の法則=弁証法」を発見したヘーゲル(1770—1831)によれば、私たちは人間や社会を理解する「考え方」として、まず対象をバラバラに区別・分離して分析(悟性的な認識)すると、次にお互いに相対立するものが出現する。ここでは相対立するものが同時に定立されるため、どうしても懐疑と矛盾に陥るが(否定的な認識)、これを乗り越えて最終的に相対立するものを肯定的に統一して把握する(理性的な認識)ことで、より高いレベルに達して問題を解決することができるようになる。

 この「変化の法則」は、一見難しそうな考え方に感じるが、私たちが自分の考えを現実世界の中で誤りを改めて徐々に正しい考え方に近づけて行くという可謬主義は、全く当たり前の日常の思考方法だろう。現実社会の中で可能性を探りながら理想(目標)を追求するが、現実の困難さの中で失敗し、挫折を繰り返す。理想と現実の乖離に失望し、自らの限界を自覚しながら、この矛盾を乗り越えようと努力し、目標実現に近づくプロセスは「変化の法則」を私たち人間社会に適用した具体例といえる。

 現代の若者を見ていると、少子化の影響か、何でも先回りしてしまう親や教師への依存心が強く、主体性が弱い若者が多くなっており、厳しい社会で逆境を乗り越えるだけの底力を秘めた人材を育成するためには、やはりこの「変化の法則」を学校教育の現場でさらに徹底する必要があると痛感する。本学の経営学部でも明朗だが素直でおとなしい若者の潜在能力を開発しようと「大化け教育」に取り組んでおり、これを支える教育思想として「変化の法則」が大いに活用されている。激しく変化するグロ−バル化社会に対処できる有為の人材を育成し、未知の社会を案内してくれる格好の「道しるべ」として、今後さらに活用の機会が広がる、と各界から期待されている。