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原点に立ち返る ~企業と学問の視点から~


教授 杉山雅浩 (国際マーケティング、海外市場開発、開発経済)

 リレーエッセイを執筆して、早や2回目の順番が回ってきた。この間、私は何を考え、何を残してきたか・・・。残念ながら答えはごく否定的な情けない結果であったような思いである。国際マーケティング、地域論(中南米論)、開発経済などが、私の専門領域であり、研究分野でもある。現代のグローバル化社会をこうした専門分野との関連で再考してみた。

 一般的には、「超氷河期」で代表されるよう、社会を取り巻く環境は益々厳しさを増している。変革・スピード・改革などの言葉はあまりにも日常化し、もはや特殊な言葉でもなんでもない。このような環境下で「原点に立ち返る」という意味を再度振り返ってみた。次に挙げる論点は、すでに10年以上前から考え、『環境と経営』第9巻第2号に掲載した論文の一部分である。「原点に立ち返る」という問答は、世界経済のパラダイム・シフト(枠組み転換)と競争激化といった現代社会の変革のなかで問いかけたものであり、「過去の経験は果たしてそのまま役に立つものかどうか」との課題につながる。一方、過去とは比較にならないスピーディーな変革のなかで、多くの経営者によって「原点に立ち返る」との言葉が強調される。これら2つの論点は、一見トレードオフの関係のように思われるが、「原点に立ち返る」とは、源流に遡って物事の本質を真に理解し、その上に立った発想もしくは発想の転換を求めることであると理解する。グローバル化やIT化によって代表される現代では、たしかに過去の経験そのものは、またそのままでは役に立たない場合も考えられる。過去の経験そのものだけにこだわり、そのために変化に対応する発想の転換を困難にしている例が多いことは否定できない。結局、過去の経験から、いかにその本質的な問題点を汲み取り、変化に対応する方策に役立てるかということが重要ではなかろうか。帰納法的な事例研究とは、この疑問に対する具体的検証方法のひとつに他ならない。

 企業においては、実際的現実的視点での「成果の実現」が目的達成への中心的位置づけにあるが、理論的研究においては、実際的現実的事例の一般化を通して問題の本質を追及することが重要であり、他方では他の学問分野も含めて、既存の理論の実際問題への適用の可能性とその条件を検討することが重要であると考えられよう。マーケティング、特に新興国・発展途上国における市場開発においては、各々の地域や国における固有の制度、伝統的な慣習を無視していては、企業における成果を上げることは困難な状況となっている。近年学問の世界においても「interdisciplinary(学際的)」ということが強調され、「産学共同・産学連携」という形での研究も益々一般化する傾向がみられる。市場開発という分野においても、企業の実際の活動と、学問的分野における理論の適応とその適応上の問題点の検討などを通して、現代の変革に対応するマーケティングが重要となっている。日進月歩で変革する技術進歩、IT化によって加速する世界市場のグローバル化現象、企業に求められる意思決定の時間的制約は益々短縮化されている。しかし、その反面で「原点に立ち返る」ということは、企業の側面においても、学問的研究においても共通する課題ではなかろうか。

 変革は困難を伴う、一方ではこれまでにない機会を創出する。こうした試行錯誤を繰り返し、現在の専門ゼミナールテーマ『社会人にむけての自己開発・人間形成』を掲げている。一人でも多くの学生が少しでも満足して社会に巣立って行くことが、私にとって「原点に立ち返った教育理念であり目標」である。一方、学生にとっては、「あなた自身が主役であり、あなた自身の行動力が、あなた自身への結果をもたらす」という原点思考をこのエッセイを通して考えていただきたい。