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韓流に見る韓国企業のグローバル戦略


講師 金 炯中(グローバル・マーケティング論、マーケティング戦略論)

 最近、ドラマやCM、バライエティ番組などで、韓国の歌手やタレントの活躍が目につく。私が来日した2001年には想像もできなかった光景である。当時は大学院入試のための論文を作成中で、日本で成功している韓国企業JINROについて分析をしていた。JINRO焼酎の日本での成功には色々な側面があるが、その主要要因は、韓国産であることを徹底的に隠して欧米を連想させるようなパッケージやロゴマークを使用したことや、西洋人だけを起用したCMを展開したことである。つまり、国際マーケティング領域で重要な課題の1つである原産国 (country of origin)イメージを不明確にしたことが成功のポイントであった。これに類似した例としては、ハーゲンダッツ(Haagen-Dazs)が米国生まれながら、北欧産アイスクリームのイメージを消費者に与えるために企業名を北欧風にしたことがあげられる。

 話を戻すが、現在、韓国企業の多くは日本のみならず、世界各国で自国の俳優や歌手を活用したマーケティング戦略を展開している。例えばLG電子は、イ・ビョンホンとキム・テヒ主演のドラマ『アイリス』の放映期間中、番組の間に自社の携帯電話CMを流して認知度をあげた。また、辛ラーメンを販売する農心は、製品のパッケージやイベント会にKARAを起用している。つまり、10年前とは正反対の戦略を展開しているのである。

 韓国では国をあげてコンテンツ産業を育成しようとしている。例えば、韓国の2008年度の文化振興予算は1169億円で、日本の1018億円より多く、国家予算比では日本の7倍である。2009年には、大統領直属の国家ブランド委員会が設置され、国をあげて国家ブランド価値向上のための対外文化広報を行っている。伝統文化は韓国文化院が担当しており、大衆文化は韓国コンテンツ新興院(KOCCA)が民間企業の映画、K-POP、ドラマ、アニメ、キャラクターなどの制作と輸出、そして宣伝に多額の国費を投入して後援している。

 こうした政府の政策と一部企業のグローバル戦略がマッチングし、韓国の文化コンテンツと韓国企業は共に成長しつづけている。
 しかしその一方で、日本では韓流ブームの加熱と共に、韓流ドラマを積極的に放映するテレビ局に対する批判の声も上がっており、嫌韓という言葉まで生まれている。こうした影響は韓国に対するイメージを下げるかもしれないし、韓国製品の不買行動にまで及ぶ可能性も考えられる。実際、原産国効果に関する既存研究の中では、消費者が特定の国に対して抱く反感を敵対感(animosity)と定義しており、消費者敵対感が該当国で生産される製品の購買行動に否定的影響を及ぼすという結果が出ている。また、韓流と消費者行動との関係を分析した研究では、韓流が韓国の国家イメージおよび製品の評価には正の影響を与えているものの、製品の購買意思の改善には何の影響も与えないという結果が出ている。

 こうしたことから、韓流が韓国企業や製品に対してプラスの影響を与えているか、マイナスの影響を与えているかに関しては長期的な観察が必要である。ただし、日本人の韓国に対する関心度が高くなったことに対しては異論がないであろう。

 韓国企業は今後、「韓流」というキーワードをグローバル戦略の中でどのように捉え、展開していくべきかをより真剣に考えなくてはならないであろう。