開学30周年記念誌

場が2つもある大学は他にないですよ。スポーツは忍耐 力、集中力、判断力が必要で協調性やリーダーシップも 求められます。これはまさに経営と同じなんですね。ス ポーツでやってはいけないことは経営でもやってはいけ ないし、スポーツで学んだことは経営に役立つんです。 三枝 企業の健康経営やメンタルヘルスケアが浸透しつ つあるなか、打たれ強い若者を育てる上でもスポーツは 大切です。上司にちょっと叱責されただけで落ち込んだ り、挫折したりしてはいけませんから。勉強は一人で黙々 とやればある程度結果がついてきます。しかし、スポー ツは相手がいる。ということは負ける可能性があるとい うことです。負ける経験をすることも人生には必要なん です。なぜ負けたのかを反省し、分析し、それを次にど う活かすのか戦略を練ることが大事で、経営も全く同じ ことが言えますね。 大坪 おっしゃる通りです。ところで、藤枝キャンパス を見ないのではないでしょうか。 大坪 そうだと思います。大学は社会や地域に貢献でき る人材を育成する「公器」のはずです。しかし、今の日本 の大学はそれができていない。だから私はそれを実現す る新しい大学のモデル、つまり人づくりを通じて地元の 産業に貢献する地域密着型の大学にしたいと改革に着手 したのです。大学も企業も人がやらないこと、気がつい ていないことをしなければこれからの時代は生き残れま せん。「静岡県を良くするための人材育成を手伝ってく ださい」とお願いしたら、みなさん二つ返事で賛同して くださいました。静岡銀行の頭取が直々に講師を務めた 銀行論から始まったんですよ。 堀川 どんな理論よりも勉強になりますね。経営者だけ でなく、若い社員が来てくれることもあり、年齢が近い と学生たちも5年後、10年後の自分の姿をイメージしや すいので、より興味を持ってくれます。 大坪 そうですね。学生はただ講義を聴くだけでなく、 講師のアシスタントもします。たとえば、ジュビロ磐田 の講座はプロスポーツのリアルな経営・運営・チームづ くりを学んだ上で、ホームのヤマハスタジアムでの来場 者向けイベントの企画・運営に学生主体で参加します。 講師をしていただいた企業の方にも教育現場を知っても らう絶好の機会となります。冠講座を通して地域と大学 の相互理解が深まったと感じますね。ほかにも、本学は 「県民大学宣言」「大化け教育」で経営改革と地域貢献を 実現していることを高く評価され、日本経営士会が主催 する「ビジネス・イノベーション・アワード 2011」にお いて、大学としては初めて大賞を受賞しました。さらに、 大学が有する知識、情報、技術を県民に提供する「総合 研究所」をオープンしたり、教員陣の教育法を磨くため の「ティーチングメソッド研究会」を開催したり、客員教授 だった作曲家の小林亜星氏にキャンパスソングを作って もらったりしました。 大坪 ええ。磐田キャンパスの存在も大きかったですね。 磐田の産業界と本学は密接な関係にあります。ジュビロ 磐田とのつながりも深い。ちょうど磐田市がスポーツの まちづくりを発信し始めたこともあって、「スポーツマン をビジネスマンにしよう」というスローガンのもと、ス ポーツ経営学科をつくりました。体育館が3つ、サッカー ■ 鷲崎 早雄(わしざき・はやお) 1945年 東京都出身 1968年 東京大学工学部卒業 富士製鐡株式會社(現日本製鉄株式会社)入社 1989年 ビジネス・システムコンサルティング会社設立 2001年 東京大学 博士(学術) 2002年 静岡産業大学経営学部教授 2016年 静岡産業大学4代目学長 2022年 静岡産業大学名誉教授。静岡産業大学総合研究所顧問 ■大坪先生の学長時代は、スポーツ経営学科を開 設し、理事長時代には、藤枝キャンパスの図書館 内に浦田周かねたか社美術館もつくりましたね。

RkJQdWJsaXNoZXIy NDY3NTA=