自ら考え、解決し、処理する「実学教育」で ビジネス感覚を備えた即戦力の人材を輩出する いこうと張り切っていました。ところが、 ちょうどコロナウィルスが世界中に蔓延し 始めた年で、やりたいことが何もできませ んでした。コロナ禍で学生や教職員の安全 を担保しつつ、どのようにして教育体制を 構築するか、どう大学を運営していくかが 最優先課題でしたから。初めて直面する災 禍で不安が募るなか、何より心強かったの は、全教職員が危機感を持ち、組織全体で この難局を乗り切ろうと、それぞれの立場 で知恵を絞り、動いてくれたことです。対 面授業からオンライン授業に切り替えない といけないので、教員がお互いに助け合い ながら研鑽を重ね、魅力あるオンライン授 業にしようと何度も勉強会を行いました。 佐野 学生への支援体制も大変でしたよ ね。パソコンを持っていない学生が3割以 上、高速ネット環境を持たない学生も同じ ぐらいいましたから。 佐藤 そうなんです。授業環境を整える ために全学生に一律3万円の支援金を支給 したり、パソコンやルーターを貸し出した りしました。職員も同じようにネットを駆 使した仕事環境を整え、コロナ禍での安全 なキャンパス運営や学生支援活動を支えま した。さまざまな対策を練ることで難局を 乗り切り、オンライン授業も軌道に乗せる ことができたのは全教職員が同じ方向に向 かって努力したことの賜物だと思います。 丹羽 佐野先生も前職のキャリアを活かし て、情報学部時代からいろいろなことに取 り組んでおられますね。 佐野 産官学の連携で、ちょうど藤枝市も ICT化で住みやすい街をつくり、教育で子 育て世代が定住する街づくりを進めていく ところでした。学生と一緒にいろいろなプ ロジェクトに参加し、市役所のみなさんと いかにして地元を豊かで住みやすい街にす るかを考えました。また、情報学部に情報 デザイン学科を立ち上げました。従来のモ ノ・コトに、デザインやアプリという付加 価値を創造することで、暮らしをもっと便 利にしていくというコンセプトをもとに大 学教育に取り組みました。その考え方は現 在の経営学部にも受け継がれています。 ■開学した頃の藤枝キャンパスはどんな様 子でしたか? 佐野 磐田キャンパスが開学した4年後 に、藤枝キャンパスも短大から4年制の国 際情報学部に改組転換されました。世の中 に情報化の波が押し寄せる中で、国際情報 学部では全員に1人1台のノートPCを持 たせ、学内にLANを張り巡らせてインター ネット環境を整えました。ただ、当時のノー トPCは2〜3時間しかバッテリーが持た ず、今のようなWifiという無線LANも一 般的ではありませんでした。そこで、電源 コンセントをたくさん用意して、情報コン セントも増やしてケーブル接続でインター ネットに繋いでいました。 丹羽 今では考えられないほど脆弱なネッ ト環境でしたね。情報システム技術の通信 系に明るい佐野先生がいたからこそ対応で きたと思いますよ。 佐藤 ほかにも学生主体の活動をされてい ましたよね? 佐野 ええ。情報デザインという新しい学 問を身近に感じてもらおうと、情報デザイ ン展という卒業研究・制作の展示会をグラ ンシップや静岡市文化・クリエイティブ産 業振興センター、Biviキャンで開催しまし た。これは経営学部となった今でも毎年1 月に行っています。また、ゼミ生とともに 地域の小中学生のプログラミング教育に協 力しました。藤枝市がソフトバンクと連携 してPepperくんを市内の全小中学校に 161台以上導入したことを受け、現在も指 導しています。 佐藤 佐野先生のライフワークになってい ますよね。それだけに情報学部が廃止され たときはお辛かったでしょう。 佐野 今でも寂しいですよ。ただ、情報学 部で培った地域との連携教育は経営学部で も継承していて、これからもいろいろな形 に変化しながらも良い財産として生きてい くと信じています。 丹羽 経営学部と情報学部の学部長を兼務 されていたときは大変だったでしょう? 佐野 そうですね。経営学部と情報学部は 良きライバルとして競い合ってきました。 情報学部のコンパクトな藤枝キャンパスに 対して、経営学部の磐田キャンパスは広 大な敷地に整備されたグラウンドと3つの 体育館があったので羨ましく思っていまし た。その二つの学部を自分がまとめる立場 になってその重責をひしひしと感じました。 ■現在、みなさんが主に取り組んでいるこ とは何ですか? 丹羽 学部長時代から継続している学生募 集です。18歳人口が減少する大変厳しい 状況のなかで、大学としてどう生き残って いくのか。本学は「就職の産大」と言われる ように就職に強いのが魅力です。昔から 「冠講座」を行って地元企業と深い関係に ありますから、学生に企業を身近に感じさ せることができます。「実学教育」を受けた 学生は就活の面接で何も恐れることがあり ません。学生が就活で緊張するのは、大人 と話した経験がないからです。 佐野 毎年、本学の就職率は高いし、優良 企業に就職していますよね。 丹羽 そうですね。どこでも良いのではな く、満足できる会社に入ることが大事。そ れが可能なのは大学と企業との距離感が近 いからです。実学教育を体験した本学の学 生は即戦力として活躍できますよ。 佐藤 即戦力育成というと専門学校でも やっているイメージがありますが、本学と は大きな違いがありますね。 丹羽 専門学校で教えるのはノウハウで す。それに対して本学は課題解決能力とコ ミュニケーション能力をしっかり備えた、 すべて自分で仕事ができる即戦力を育てま す。つまり、自分で考え、自分で解決して、 実学教育を経験しているから 就職率が高く、即戦力になる ■佐野 典秀(さの・のりひで) 静岡県富士宮市出身。東京工業大学大学院理工学研究科 修士課程修了。博士(工学)。株式会社東芝研究員を経て、 1991年静岡学園短期大学経営情報科講師、1998年静岡 産業大学国際情報学部助教授、2005年情報学部助教授、 教授を経て2022年から経営学部学部長。著書に「メタ バース&NFT」他。趣味は鉄道とバンド演奏。
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