開学30周年記念誌

11 今、静岡県で進学を希望する高校3年生が15,000人位 います。それが年々数百人単位で減っていて、地方の小 規模大学はどこも苦戦しているのが現状です。静岡県に は約20の大学がありますが、募集定員は8,000人しか なく、7,000人は東京や名古屋の大学に進学します。だ から県内の学生たちをしっかり受け止めることができれ ば定員を下回ることは本来ないはずなんですね。 大坪 マスコミは少子化が進んで大変だと不安を煽りま すが、少子化はチャンスですよ。子どもが少ないからこ そ手厚い教育ができるんです。教育費が高いと言います が、昔は一家に5人も6人も子どもがいました。今は1 人か2人でしょ。私はDXやAIを活かせば 6年かかる教 育が2年で済むようになると期待しています。それを本 学が世界に先駆けて実現できるといいですね。そう考え ると今ほど教員が能力を発揮できる時代はないとも言え ますよ。 三枝 なるほど。ただ、今の高校生に大学で何を学ぶ かを伝えようとしても、なかなか理解してもらえないで しょう。社会情勢について関心を持っているとか大学の 学びに興味があるという生徒なら別でしょうが。 堀川 そこが難しいんです。他の大学と同じようなこと をしても高校生の心をとらえることはできません。短い 言葉でわかりやすく伝えないとダメで、その1つが「実 学教育」です。昔の学生のようにすでにでき上がった学 問を文献から学ぶのではなく、今、現実に起きているこ と、これから起きるのではないかというテーマについて 実社会で働いている人から学ぶ。直接聞いて、現場に足 を運んで自分の目で見てみる。そんな実学教育を通じて、 今、社会で課題となっていることを自分で考え、解決策 に取り組むことの面白さを伝えたいですね。もう一つは 大坪先生の提唱から始まった「大化け教育」です。人は誰 でも優れたもの=可能性の種を持っています。その種が 堀川 2017年、2018年が募集の底でしたが、その後 少しずつ回復して、2020年、2021年は定員をかなり オーバーするほどの志願者が集まりましたね。 鷲崎 ええ。ところが、難題がやっと解決したと思った ら今度はコロナウィルスに見舞われました。歴代の学長 で私ほど環境の変化に翻弄された人はいないのではない でしょうか。学生・教職員の健康とキャンパスの安全を 保ちつつ授業を継続するのは大変でしたが、これを機に 教職員の気持ちが一つにまとまったのは嬉しかったです ね。オンライン授業に切り替えるといっても誰もやった ことがない。しかし、私が指示するまでもなく、みなさ んが自主的に勉強会を開いてサポートし合ったり、パソ コンに詳しくない人まで一緒にオンライン授業の準備を 手伝ったりしていましたね。 三枝 先手、先手で対策を講じたのがよかったですね。 鷲崎 そうですね。一例を挙げると、オンライン授業用 の準備金として学生全員に授業料の中から3万円を返還 しました。事務局のスタッフが迅速に作業をこなし、現 金書留で一斉に送付したんです。県内では本学と静岡福 祉大学が先陣を切り、それから他大学も追従してきまし た。おかげで、保護者からさらなる授業料返還を求める 声などもありませんでしたし、クレームどころか感謝のお 言葉をたくさんいただきました。コロナ禍の3年間、キャ ンパスに学生はほとんどいなくて、私はその時期に退職 することになりました。コロナが明け、学生が戻ってきて 賑やかに過ごしている光景を見たときは正直羨ましかっ たですね。 堀川 現学長の私が力を入れているのは学生募集です。 ■少子化で大学運営が厳しい今こそ教員が能力を 発揮するチャンス!

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