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平成30年度卒業式 学長式辞


 本日ここに、関係各位のご臨席のもと、平成30年度静岡産業大学卒業式が盛大に挙行されますことは、私の大きな喜びであります。

 ただいま経営学部269名、情報学部144名、計413名の方々に学位記を授与いたしました。卒業生の皆さん、おめでとうございます。卒業生の中には16名の留学生が含まれています。遠い母国を離れ、日本語と格闘しながら立派に研鑽を積まれたことに敬意を表したいと思います。

 そして本日はここに、今日までの長い間にわたって皆さんを暖かく支えてこられ、この日を心より待ちわびておられたご家族・保護者の方々にも多数ご列席いただいております。その皆さま方のお喜びもいかばかりかとお察しし、祝意を申し上げる次第です。おめでとうございます。

 今日のよき日を迎え、夢を抱いて入学されてからの学生生活は、あっという間に過ぎ去ったと感じている人が多いのではないかと思います。この4年間皆さんは、日々の授業やゼミ活動における研鑽を通じ、幅広い教養と共に多くの知識や技術を習得され、様々な苦難を乗り越えながら、大きく成長されたものと思います。

 また部活動やサークル活動を通じて、尊敬する先生や、先輩、同輩、後輩の皆さんなど、様々な人たちとの出会いがあり、かけがえのない友人を得て友情を育み、良き思い出を作られたものと思います。

 卒業式にあたり、学長として皆さんに贐(はなむけ)の言葉を送りたいと思います。それは「考える力を身につけよう」ということです。考えるということは人間特有のことだと考えられています。かのフランスの哲学者であり数学者のパスカルが残した「人間は考える葦である」はあまりにも有名です。人間は草木の中の1本の葦のような弱い存在だが、しかし考える能力を持つ、尊厳的な存在だということを述べたと言われています。また、同じくフランスの彫刻家ロダンは「考える人」と名付けられた有名な彫刻を制作しています。静岡県立美術館にも確か展示があったと思います。ロダンの彫刻を見ると、考えるということが苦悩しているようにも見えます。考えるとは確かに苦しいことでもあります。できれば考えないで逃げてしまいたいと思うこともあります。

 私は朝の連ドラを見てから大学に出勤することを習慣としていますが、今は即席ラーメンの開発者、安藤百福さんの半生を描いたドラマが放映されています。今や即席ラーメンは国民食とも言われ年間で60億食も出荷されているそうですが、安藤さんが即席ラーメンの開発を思いついた時には、その姿は影も形も世の中にはありませんでした。テレビドラマは、安藤さんが開発を思いついた時の周りの人たちの反応を面白く描いています。そして安藤さん自身が考えに考え抜いていく様子を描いています。大変な困難、困難を乗り越えていく精神力です。たかが即席ラーメンの開発と思う人もいるかもしれませんが、世の中にない全く新しいものを開発するということがいかに大変なことか、自分で考えることがいかに大切なことか、ストレートに伝わってくるドラマです。

 君たちは、いつどのような状況で全く新しいものを考える、ということを経験しなければならないかわかりません。現在は世界史が大きく書き換えられようとしている時代です。時事刻々と変化する世界情勢の中で、天然資源が乏しく少子高齢化が急速に進行している日本が、今後も繁栄を維持していくためには、変化に適切に対応できる人材を育てるしかありません。「人材」、それは皆さん方です。そのためにはしっかりした教養に裏付けられた基礎力の上に、考える力や想像する力を鍛える必要があります。その意味で、今まさに考える力が要求されているわけです。私は是非皆さんに、この静岡産業大学で学んだ成果を活かして、「考える力を身につけて」いただきたいと思います。
「考える力」の中でまず重要なことは、一般に常識的だと思われていることを疑ってかかることです。批判的に物事を見ること考えることこれを「クリティカル・シンキング」と言います。即席ラーメンでも、麺を打ってからゆでるという常識を覆して、乾燥させた麺にお湯をかけるだけで完成するということを考えたわけです。さらにどんぶりや箸などはそこら辺にいくらでも転がっているという常識を覆して、丼つきのカップ麺を作り出すということを考えるわけです。これによって麺の食べ方をかえてしまうような新しい需要を生み出したのです。みんなが常識だと思っていることに異を唱えることはなかなか難しいことです。

 私も経験があります。1980年代の後半ですから今から30年ほど前、アメリカの3comというベンチャービジネスと提携して電子メールを日本に普及させるというプロジェクトに参加したときのこと、日本のビジネスマンの反応は、ほんとんどの人が「NO、そんなものは日本では普及しない、日本は顔と顔を突き合わせたコミュニケーションでなければだめだ」というものでした。1980年代の後半、日本はバブル経済の真っただ中で、ビジネスマンはみんな自信があり、Japan as No1と言われた時代です。しかし、私は実際に電子メールを自分で使用して仕事をしてみて、たとえばそれまでは、会議のアポ取りや、会議録の配布などにおいてその便利さに驚いていましたので、それまでの彼らの仕事のやり方に疑問を持っていました。それから、あまり間を置かないで、日本でも電子メールが爆発的に使われるようになりました。

 もう一つは「ロジカル・シンキング」です。感情的に一時的にものを見るだけではなくて、場合を尽くし、物事の前後関係をよく考えて論理的に答えを出していくという姿勢です。このように考える力を身につけていくためには方法があります。皆さんは大学生活の中でこの方法を身につけたわけですが、これから社会に出てからも大切なことですので忘れないようにしてください。

 最後に静岡産業大学の将来のことについて話をしておきたいと思います。静岡産業大学は1994年に創設され今年で開学25年を迎えます。現在、今後の25年を見据えて新たな静岡産業大学を構想中です。しかし新しくとも、静岡産業大学の基礎にあるもの、すなわち地域と連携し地域に貢献する大学であるということ、東海に静岡産業大学あり、小粒でもキラリと光るユニークな教育をする大学であること、少人数により学生一人ひとりに寄り添う大学であること、などの本学の理念は、教職員一同、また皆さんの後輩の学生にとって全く変わらない事とです。
どうか卒業する皆さんには静岡産業大学で学んだことを誇りに思い、しっかりとした社会人として地域社会の中、企業の中、家庭の中で頼れる人となり、また後輩の模範となる人となっていただきたいと思います。今まで磐田キャンパス、藤枝キャンパスそれぞれで別々に存在していた同窓会が、今年度一つに統合されると聞いています。同窓会は卒業生と大学との接点です。どの学部を卒業しようとも同じ同窓会の一員として、卒業生と静岡産業大学が一つに繋がっていこうということだと思います。社会に出たら忙しくて頻繁に同窓会に顔を出すことができないかもしれませんが、時々は顔を出していただいて、これからの静岡産業大学の力になっていただければ大変ありがたいと思います。卒業生の皆さんは静岡産業大学のかけがえのないレジェンドです。 皆さんの今後の活躍を心からお祈りします。

 もう一度皆さんに卒業のお祝いを申し上げます。経営学部卒業生269名、情報学部卒業生144名、合わせて413名の卒業生の皆さん、卒業おめでとう。

平成31年3月13日
静岡産業大学 学長 鷲崎早雄