物狂いの観点から見た自己史



 
 私の性格の特徴は、短気、攻撃的、社会性・協調性の欠如、といったところでしょう

か。「長いものに巻かれろ」というコトバがありますが、私の場合、長いものを見ると

ズタズタに切りたくなるのです。取っつきは悪いし、人格者には程遠いと思います。

 私の夢は、これまでの実験によって育ててきた自分の理論を、国際的に認めてもらう

ことです。そのためには、国際誌に論文を何度も掲載し、国際的な論争に勝たねばなり

ません。そんな闘いの際には、「長いものを切りたくなる」私の性格が、私を支えてく

れると思います。

 私のもう一つの性格特徴として、やたら熱中してしまうというのがあります。過去を

振返ってみても、いつの時も何かに熱中し、狂っていたことに気づきます。そして、狂

ってしまうとほかのものが見えなくなってしまいます。



BEATLESを中心とした音楽狂い

 中1の頃BEATLESを知り、狂いました。5人目のBEATLESになりたいと、本気で思

いました。中3の時ギターを覚え、高1の時ロックバンドを結成(THE FEVERS)。
 
 バンドは大学の助手時代まで続けました。バンド結成当初はギターとベース分のアレ

ンジをしていましたが、大学4年の頃から作曲に熱中し、大学院1年の頃最も多く曲を

書きました。バンド仲間がチリジリに別れたので、一人多重録音のミュージックテープ

を作ったりしたのもこの頃です。大学院の頃は、年3回精神病院の患者さんたちの喉自

慢大会で、ギター伴奏もしていました。パーソナルコンピュータに狂うようになって、

ギターを手にしなくなりました。それでも、毎年大学祭でバンド演奏が始ると、うるさ

いと顔をしかめる先生たちを尻目に、ワクワクして喜んでいます。「反核平和と国際交

流の夕べ(1989年7月、第2食堂)」で教職員組合代表としてコーラスをした時、ギ

ター伴奏をしました。その時久しぶりにギターを出したら、ネックがそっていました。

 最近(1996年12月)、長年の夢がかないました。Rickenbackerのショートスケー

ルのギターを手に入れたのです。もっとも、本物ではなくコピーモデルの安物ですが。

このギターは、たとえば I'm happy just to dance with you で、ジョン=レノンが歯

切れのいいカッティングを弾いていたものだし、 映画「HELP!」のAnother girl のシーン

で、ジョージ= ハリソンがリードをとっていたものです(実際のレコードのリードギターは

ポールとのことですが...)。残念ながら、トレモロアームは,私のイメージしていたもの

とは違っています.それでも,中学・高校の頃、広島市内で一番大きな楽器店に飾って

あった本物を、しょっちゅう見に行っていた頃を思い出すと、夢のようです。

 さらにその後,ポールがYesterdayやMichelleを演奏したときのギターと同一モデル

(EpiphoneのTexan)を手に入れました.インターネットで捜したあげく,銀座の山野楽器で

格安で入手しました.これを使って,YesterdayやMichelleの演奏に挑戦しています(1999/11).

⇒「ひとりBeatles」(2001/9)


コンピュータ狂い

 1980年の暮にボーナスでPC−8001を買って以来、コンピュータに狂いました。
 
 8ビットCPU (Z80)、32Kbyteメモリ、外部記憶装置カセット・レコーダという構成で、

BASICで多変量解析のプログラムを作っていました。この狂いかたは尋常でなく、

徹夜もザラというありさま。当然、視力は極度に落ちる(眼鏡を常用するようになりました)。

眼性疲労からくるカタコリもひどく、それでもそんなことでヒルムことなく狂いました。

はっとわれに帰った時、心理学研究のためにコンピュータを使っているのではなく、

コンピュータのためにコンピュータを使っている自分が見えました。これではいけないと思い、

狂うのはやめました。1986年のことです。でも現在も、コンピュータは欠かせません。

実験、データ解析、論文書き、とすべてコンピュータで行っています。



サッカー、野球、そしてテニス

 小さな頃から、野球で育ちました。この頃は狂っていたと思います。中学入学と同時

に野球部に入りました。けれども、BEATLESの方が上だったのです。高3の時、受験の

ことを思い、バンドを控え目にし、そのかわり毎放課後、サッカーをしていました(な

んのこっちゃ)。仲間で買った革のサッカーボールを、半年で蹴りつぶすありさま。こ

の時の経験が、大学3年の時学内サッカー大会で優勝した時に役立ちました。

 1975年は野球に狂った年でした。心理学科内で、サイコスターズ(なんとダサイ名

前)というチームを作ったのと、カープが初優勝したのとが重なったのです。毎晩のよ

うに素振りをし、週末には試合をしました。キャッチャー、セカンド、たまにピッチャ

ーをし、3番を打っていました。

 コンピュータ狂いを止めてから、テニスを始めました。これまた狂いました。始めて

3ヵ月の時、とある大会のCクラスで優勝したのがいけなかったようです。社会性の欠

如している私には、団体競技よりも個人競技の方が似合っています。また、テニスプレ

イには、野球のあらゆる要素が詰っています。ストロークには、左右打ちのバッティン

グと内野守備の要素が入っています。サーブはピッチングの感覚だし、ロブを追う動作

は外野守備とよく似ています。本も十数冊読みました。事実は一つしかないのですが、

理論はいくらでも作れます。十数冊読んでみて、テニス理論があまりにも多く、かつそ

の根拠が非常に希薄であったり、誤った科学認識によっているものが多いことに驚きま

した。自分でテニスの本を書こうかと思ったくらいです。ある人はストロークで肱をの

ばせというし、別の人は曲げたままがいいといいます。これは心理的にはのばして打っ

ている積りでも、実際には少し曲っているということが実態なのです。文献学者は本を

信用しますが、実証科学者は本を疑うことから始めます。私のテニスは、打ちかたの仮

説を立て、それをコート上で試してみて修正するという、実験の繰り返しでした。こん

な楽しみかたもあるのです。一時期はご飯を食べる時もラケットをにぎっていました。

現在は慢性化していて、狂気状態ではありません。それでも毎週末は楽しんでいます。



 その他そして究極

 子どもの頃のプラモデル、大学3〜4年の頃の姓名判断、組合の似顔絵書き、など小

さな狂気はたくさんありました。

 それでも、究極の一番長い狂気(慢性化してしまっている)は、実験狂いでしょう。

心理学の実験ほど長い間私を駆り立て続けたものはありません。大学院時代は、助手の

方から、実験神経症(本当の意味は困難すぎる分化条件づけ課題によって、異常行動を

示すようになったパブロフの犬のような症状をいう)と呼ばれていました。落ち込んだ

りしたときに、実験を始めると、急に元気になるというのです。これからも、死ぬまで

狂っていたいと思います。

 皆さんも、何か狂えるものを見つけ出せると、楽しいし幸せだと思います。周りの人

は迷惑かも知れませんが。