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リレーエッセイ

 私の「Youは何しに日本へ?」

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特任教授 須部宗生(日英表現比較 小学校英語教育)

  私は週1回東京駅の新幹線ホームの待合室のベンチなどで見知らぬ外国人に話しかけ、私の好きなテレビ番組「Youは何しに日本へ?」の真似事をして楽しんでいる。まずこの番組であるがこれは東京テレビの番組で、スタッフが成田空港や関空などの国際空港で、来日する外国人にアポなしの突撃取材を決行し、彼らの来日目的を聞きだし、本人の了解を得たうえで、彼らの滞在先にテレビクルーが同行し数日間密着取材をした後、コメディアンのバナナマンがコミカルなタッチで外国人たちの日本滞在を紹介するというものだ。私がこの番組が好きな理由は、最近数が急速に増えつつある外国人訪問客をただ十把一絡げに紹介するのではなく、彼ら一人一人のユニークな来日目的、例えば、秋田の「またぎ」とのクマ撃ち体験をするために来日したという、ドイツ人青年や刀鍛冶に弟子入りするために来たというアメリカ人など、彼らの個人としての様々な生き様を知ることが実に興味深いし、日本文化に興味を持つ外国人ならではの、独特な視点を通し日本を再発見できるからだ。

  そんなわけで、私もこの番組の真似ごとを週1回ここ2年間ばかり実行している。私は月曜日に東京のある大学で非常勤講師をしていて、その帰り、自分の乗車時刻より小一時間前に東京駅に行きプラットフォームで乗車前の外国人に話しかけるのだ。私がこの2年間で話しかけた外国人は、アメリカ人、スペイン人、イギリス人、オランダ人、ロシア人、フランス人、ポルトガル人、オーストラリア人、中国人、インド人、シンガポール人、タイ人、ベトナム人、フィリピン人など、国籍、性別、年齢も様々な数十人にも及ぶ。しかし私の場合はテレビ番組のように、外国人の滞在先まで行き密着取材をするわけもなく、つかの間の会話を楽しむものなので、彼らに接触する方法も多少異なる。まず私はいきなり彼らにテレビ番組のフレーズのようにWhy did you come to Japan?などとぶしつけな質問はしない。実は、私にはこの質問はいささか失礼だと考えている。私の場合はまずExcuse me, but are you (a) tourist(s)? などと切り出す。しかし実際にはほとんどの場合は、大きなスーツケースなどを持参している彼らの姿で聞く前に一目瞭然、観光客だとわかることも多い。因みに小さめの荷物を持っている場合には仕事上の出張などの場合が多いようだ。というわけで、観光客の場合には、You look like one because you carry such big bags. などと言い、Where are you from? などとお決まりの質問を続ける。そして彼らの出身国が私が訪問したことがある国ならば、必ずその国で私自身が訪れた場所や出会った人たちのこと、楽しかった思い出、さらにおいしかった食べ物などについて述べ、もし私の行ったことのない国の場合ならは、その国の文化的特徴や魅力などを聞きだし、是非そのうちに訪問したいと熱く伝えることにしている。また乗車時刻まである程度の時間があり、例えば相手が京都や奈良を訪問する予定の観光客などの場合には、昔取った杵柄のガイド通訳としての経験を生かし、京都や奈良の神社仏閣に関する若干の歴史的な説明もする。そして多くの場合、しばらく話が進むと旅の解放感からか、互いのプライベートな話題に及ぶ。そんな時、私は相手の年齢に合わせて孫の話をしたりする。また時にはその人なりの思わぬ人生模様に接することもある。例えば、ポルトガル人の母から聞き出した、日本人の父の情報を頼りに、幼少の頃別れたままの父に大阪まで会いに行くというポルトガル人青年にも会った。いずれにしても、彼らとの別れ際には、私は常にThank you for visiting Japan. Have a nice trip. と心を込めて言うように心がけている。すると必ず、彼らはThank you. Nice talking to you. などと笑顔で答えてくれる。私はその笑顔を見るだけで単純にうれしいし、ただ楽しくてやっているわけで、大げさな国際親善をしているつもりもない。しかし2020年の東京オリンピックに向けて日本を訪問する外国人も着実に増加している今、彼らにささやかではあっても日本滞在中に楽しい思い出を作ってもらいたいと考えている。また因みに私のゼミ生はこの1年でアメリカやニュージーランドに短期留学をした学生が3名いる。その彼らには特に最近増えた県内の外国人訪問客に下手な英語でもよいから話しかけ、「Youは何しに日本へ?」を実践することを英語学習の観点からも強く勧めてもいる。

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