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通信37「私が心理学にはまったわけ」


静岡産業大学経営学部 教授 太田さつき

産業・組織心理学、社会心理学と私

今年度の4月に静岡産業大学に参りました。この静岡産業大学ではまだ新参者ですので、この「応用心理学研究センター通信」には自己紹介をさせていただくことにしました。太田さつきと申します。よろしくお願い致します。

私の専門は産業・組織心理学と社会心理学です。産業・組織心理学は働く人々の心理や行動を研究する心理学で、社会心理学は他者や集団から影響を受ける人々の心理や行動を研究する心理学です。大学では英米文学を学びましたが、卒業後企業で働きながら心理学を学び始め、心理学の中でも産業・組織心理学と社会心理学に興味をもちました。その理由は、働く中で日々思うことがこれらの心理学を使って考えると、スッキリ整理できて心地よく感じたからだと思います。自分の頭の中でグルグル思いつめていたことを産業・組織心理学や社会心理学の理論で考えると、悩みがいくらか軽く感じられるようになったからともいえます。心理学は社会に出て役立にたたないと親から言われて大学では英文科に進んだのですが、私なりには心理学は役立っていたのだと思います。もし、会社員時代に人を管理したり指導したりする立場にあったら、もっと役立てられていたかもしれません。

会社員時代の心理学の役立て方

仕事に意欲がわかない時、自分を情けなく思ったり、置かれた状況に腹を立てたりします。嫌な気持ちもすぐに収まればよいのですが、長く考え続けると益々嫌になったりします。そんな時心理学の理論を使って考えると、意欲がわかないのは自分だけのせいだけではなく、意欲がわきにくい状況に置かれているからであり、その状況を作り出しているのは特定の誰かではなく、人や集団や環境が互いに影響し合って作られているからと整理することが出来ました。私が変わり者なわけではないと思えるだけで気が楽になりました。気が楽になると解決しようと前に進むこともできます。

最初にしっくりきたのはマズロー

意欲に関わる有名な理論にマズローの欲求階層説があります。マズローは人の欲求を5つに分けました。基本的なものから順に、生理的欲求、安全と安定への欲求、所属と愛情の欲求、自尊欲求、自己実現欲求です。仕事に対するモチベーションもこの5つの欲求を基に考えることができます。生活のためというのが生理的欲求。安定した生活や健康を維持するためというのが安全と安定への欲求、良い人間関係をもったり社会と繋がったりするためというのが所属と愛情の欲求、自分を周囲や自分自身に認められたいというのが自尊欲求、自分らしさを追求し成長したいというのが自己実現欲求です。マズローは基本的欲求から順に一つ欲求を満たすと一つ上の欲求を求めるようになると考えました。最初は生活のためであっても、それが満たされると次は健康的に安定して働きたいと思うようになるという具合に、階段を上りたくなるのが人間なのだとマズローは言います。階段を一段上りたい気持ちが意欲の源になるという考え方です。

私も入社した頃はお給料やボーナスがもらえるだけで嬉しくなってやる気になりましたが、暫くすると、そうはいかなくなりました。お給料をもらって健康を損なうことなく働けて、同僚や上司に恵まれているのは幸せといえます。それでも不足を感じるのは、私が不満だらけのわがまま人間だからではなく、階段を一段上りたいという人間の自然な欲求があるからだと納得できました。とはいえ、面白いと感じたのは、私が悩みがちで不器用な人間だからかもしれません。器用で賢い人ならば、心理学の理論など使わずに自力で頭を整理したり、解決できたりするのかもしれません。

心理学者になって

マズロー以外にも面白いと感じる理論が色々あって、追い求めているうちに心理学者になってしまいました。大学の授業では、私が感じた面白さを何とか伝えたいと四苦八苦しています。社会に出て働き始めた時、私の講義を聴いた方が「ああ、このことか」と思ってもらえたら最高に幸せです。