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通信8 なぜ今、経営学部に「心理学応用コース」が必要か?


静岡産業大学講師 藤田依久子

今までに、よく知られていないスポーツ、例えば、ラクロスやセパタクローで、日本代表チームをつくって、世界で戦っていこうとした時のことを考えてみる。 まずは、技術的なことを考えるだろう。そのスポーツに精通した、技術能力の高いコーチ、または技術指導能力の高いコーチを招くことを考えるだろう(明治のはじめに、日本が富国強兵殖産興業政策をとった時も海外の高い技術力の日本への導入を積極的に行った)。
この段階では、あまり心理学の出番はないだろう。しかし、その努力が実って、日本のラクロスやセパタクローの実力が、世界水準のレベルに近づいてきたらどうだろう。そうなると、技術の導入よりも作戦や心理戦に優れた指導者が求められるだろう。 前楽天監督、野村克也氏は、技術指導も優れているのだろうが、筆者には、「作戦」や「心理戦」に優れた指導者という印象である。また、野球の監督というだけではなく、優れた「組織のリーダー」と日本の社会では見なされていた。

今の日本は、産業のどの分野においても、技術水準は高い。もちろん、さらなる技術の向上を目指さなければならないが、今、産業界では、技術のわかる人間の他に市場心理、顧客心理、消費者心理、従業員心理、異文化交流等、心理のわかる人間が求められている。 また次に、これとは別の視点から考えてみるとする。今、『コンフォートゾーンの作り方』、『怒らない技術』といった書籍が売れている(フォレスト出版)。筆者は、電車の広告で、これらを目にすることが多い。

これらの本で述べられているのは、「人間の感情をセルフコントロールすること」である。これらの本を買っている人がたくさんいるということは、多くの人が毎日カムフォータブル(comfortable)ではなく、毎日怒りたい気持ちを抑えながら生活しているのだろう。
今、「不機嫌な時代」と言われている。また、「うつ」の時代といわれている。
カムフォータブルではない状況、怒りたい状況にある時、人がこの状況を改善するためには、二通りの方法が考えられる。
一つは、その状況を積極的に変えていくという方法である。例えば、職場の中で何か居心地の悪さを感じたら、自分から積極的にその原因をなくすよう行動することだ。

もう一つは、自分の周りの不快な状況を変えるのではなく、その不快な状況に耐えることである。 しかし、ただ不快な状況をじっと我慢するだけだと心がもたない。そこで、上記の二冊のような本を読んで、多くの人は、自分の心が痛まないようにしているのだ。
つまり、今、この困難な時代で、状況を変えることは、実際には難しく、自分の「ストレスマネジメントに躍起になる」多くのサラリーマンの姿がこれらの広告から想像できるのである。

このように、今の日本の労働をとりまく状況を考えると、労働者の立場からみても、経営者の立場からみても、「心理学」が必要とされている。
かなり以前に、心理学が文学部で教えられるようになった原因は、文学部の学生は、他の学部生に比べて、教員になる人が多かった事と、文学部の学生に女子学生が多い事が考えられる。女子学生は、やがては妻や母となり、家庭を支えることになるだろう。この時、「家庭内の心の問題」は、母の分担である、と考えられていたのかもしれない。

今、なぜ経営学部に「応用心理学」が必要なのか?についてだが、上記したように、ビジネスの場面で必要とされているためであるが、ここで必要とされている心理学は、従来、文学部で教えられている心理学ではない。
ビジネス場面に特化した「応用心理学」なのである。