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通信6「上手な話し方への第一歩」


静岡産業大学非常勤講師 町田利企

最近コンビニエンスストアやウェブ上でも、「上手な話し方」などという本が目に付く。それだけ、「上手に話したい」と思う人が増えているのだろう。

普段よく言うことだが、「~のやり方」という本を読んだところで、その「やり方」が一朝一夕に身につくわけではない。「泳ぎ方」の本を読んで泳げるようにはならないのと一緒で、「やり方」を読むだけではなく、実際に話さなければ、「話し方」は身につかない。やはり、日常で質の高い「話し方」を実践するのが、身につく最短の道だろう。

「話し方」を左右するカギは、日常で「自分自身に問いかけているかどうか」にあると思う。「問いかけ」とは、「なぜ」「いつ」「どこ」「だれ」「どのように」などの疑問を自分自身に投げかけてみることを言う。

「暑い」とよく言うが、そこで、「なぜ暑いのか」、「いつと比べて暑いのか」、「どこと比べて暑いのか」、「誰にとって暑いのか」などという問いかけを日常で実践してみて欲しい。それらの疑問に対して正解を常に準備する必要は無い。問いかけをして、それらに対して「仮説」が自分の中に準備できるだけでよい。このような健全な懐疑心や批判的精神を持つ態度は、客観的な思考を育て、答えを引き出すスピード感を養うはずである。

対話は相手があってのことである。当然、相手も自分のことばに懐疑心や批判的態度をもって臨んでくる。そこで、相手を見て、さらに自己評価をすることで、よりスムーズな対話やより上手な「話し方」が実践できてくるのだと思う。

携帯電話のメールや近頃流行の twitter は、短い文章の中で言い切り、送信する時点では一方通行であることに便利さや面白味がある。それは解るのだが、「おいしい」「たのしい」などの感情や想いだけの記述になりがちで、スピード感が無く、精神的に相手の懐疑や批判に晒される自覚が希薄で、それゆえに瞬時に自己評価をしにくいのが欠点である。

「暑いですね」
「今日は特に暑いですね」
「昨日よりも3度も暑いらしいですよ」
「それは暑い訳だ。明日も暑いでしょうか」
「明日は雨が降るみたいですね。少しは涼しくなるでしょう」

という対話は、
「今日は暑い」と投げっぱなしになるメールなどよりは格段に「話し方」が鍛えられるはずである。
もし、「話し方」を身につけたいのであれば、ぜひとも日常で自分自身と対話し、問いかけ、答えを準備できる態度を身につけてから相手に話しかけて欲しい。
その「自分自身との対話」が「上手な話し方」、引いては「円滑なコミュニケーション」の第一歩になると思う。